短文
□IKEMEN NOTE
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退屈な日常を、彼は過ごしていた。
夜神月、17歳。
成績優秀、警察官僚の息子であり、しかも超☆イケメンである。
何一つ不足のない人生に、彼はほとほと退屈していた。
I K E M E N
N O T E
(ん…?)
授業の内容は月がとっくの昔に、予習復習していたもので。
あまりの退屈さに頬杖をついて窓の外を眺めていた月の目の前に、何か黒い、小さな物が映った。
(何だ?…あれ)
それはグラウンドに落ちたらしく、月はそこにじっと視線を注いだ。
(ノート……?)
放課後、月はいつもより急いで帰り支度をし、教室を出た。
(確かこの辺…)
グラウンドには帰途についた他の生徒の姿もちらほら見当たるが、ノートには誰も気付いていないようだ。
月はその黒いノートを拾い上げた。
「イケメン…ノート…?」
ノートの表紙には白文字の変わった字体で、IKEMEN NOTEと書いてある。
「ははっ、変なの」
月は歩きながら、パラパラとノートのページをめくっていった。まだ何も書かれていなかったが、表紙の裏にはこう書いてあった。
How To Use It
The person to whom the name was written in this note becomes a gay.
「使い方……このノートに名前を書かれた人間はゲイになる……」
月は噴き出した。
「ふっ…あははっ、」
(誰が落としたんだよこんなの…ホモって噂の、A組の岩沢かな)
「ホモになるノートかぁ…」
もちろん本当に効果があるなどとは思わなかった月だが、自室に帰ると机の上に、ノートを広げた。
「さてと…」
つい最近の全国模試も余裕の一位で、勉強は暇つぶし程度にしかならない。
月は超イケメンなので当然モテるが、頭の悪い女と遊ぶのは疲れるだけだ。(尤も、だからと言って月はゲイではない)
退屈しのぎに、このノートに名前を書いてみようといったところだ。
「ん〜…そうだなぁ…」
こんな馬鹿げた物に名前を書くのに、わざわざ机に向かう必要もないか…と、月はノートとペンを持ってベッドに横たわった。
「実験実験…」
月は笑いながら、ノートに適当な字で名前を書いた。
『夜神総一郎』と。