・短・
□*好奇心*
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「そうだなぁ……。」
新八の質問に原田は無駄に真面目な顔で物色を始め、廊下を通り過ぎて行く隊士達を見ては、眉をしかめる。
その時、斎藤が静かに廊下を横切った。
「お、斎藤ならイケんじゃねーか?あいつ何気に線細いしな。」
「おぉー斎藤か。まぁ面もいいし無くはねぇな。」
漸くいいのを見つけたとばかりに、何故か嬉しそうな顔をして話す原田に、それ以上に楽しそうな新八が同調した。
「僕も一君なら抱けますね。」
「うぉぉっっ!!」
コソコソと話している二人の間をぬって、いきなり沖田が顔を出した。
背後に立たれていた事にさえ、気付かなかった二人はどれだけ夢中だったのかと、自分達に苦笑いを浮かべる。
「……嫌、総司?こ、これは冗談でな?」
原田との内密な『ここだけの話』にするつもりだったあまりにも悪ふざけな会話を聞かれてしまった事に動揺した新八が冷や汗を流しながらなんとか弁解しようと言い訳を口にする。
とうの沖田はそんな新八の態度を他所に、感情の見えない微笑みを浮かべたまま新八の隣に腰を下ろした。
「別にいいじゃないですか。侮辱してるわけじゃ無いんですし、僕も素直に意見を言っただけですよ?」
「そ、そうか?」
何故か乗り気な沖田を見て安堵したのか、新八はお咎め無しを悟ってまた笑顔に戻る。
「新八さん、左之さん。僕は?僕の事、抱けます?」
「えっ、総司を!?本人目の前にしては言いづれぇよ。」
「本当に抱けなんて言って無いんですから気軽に答えてくださいよ。」
「……そうだなぁ……アリっちゃアリかな。」
「俺もイケるぜ。なんなら優しく抱いてやろうか?総司?」
「左之さんならいいかもしれないですね。扱い慣れてそうだし。」
「おぃ!それじゃ、俺は慣れて無さそうって事かぁ!?……まぁ、左之には負けるけどよ……。」
沖田の登場で掘り下げる必要の無い、無意味な好奇心をおおっぴらにし始める面々。
そんな二人を見て、沖田は意地が悪い笑みを顔に浮かべた。
「じゃあ、土方さんはどうです?」
「ひ、土方さん!?」
沖田の問い掛けに、その名前に敏感になっている二人は声を荒げた。
そしてすぐに口を手で塞ぐ。
こんな話をしているなど、土方の耳に触れたら大事だ。
それで無くとも、その事件のせいで、組編成やら部屋割やらを変えなければならなくなった土方は、苛立ちから最近かなりピリピリしているのだ。
そんな時にこんな悪ふざけでしか無い話をしているなんて聞かれたら、悪くすれば切腹ものだからだ。
その名前が出た事に明らかに恐怖心から来る動揺を見せた二人を見て、沖田は楽しそうに笑っている。
「ね、どうです?二人共。あの人外見だけならその辺の女の人より綺麗だし色白だし、いい感じなんじゃないですか?」
沖田の土方押しに対して、原田と新八は考え込むように難しい顔をした。
「土方さんはよぉ……そりゃ見た目は絶品だろうが、こう、さ…もう鬼副長の顔が張り付いてんだろ?そんな風に考えただけで切腹させられそうでおっかねぇよ。」
「だな。素材は完璧なんだがそういう悪ふざけに含まれ無ぇつぅか、そんな風に見たらやばいっつうか、な?」
二人はしどろもどろになりながら、もしバレてしまった時の恐怖を考えて消え入りそうな小声で答えた。