・短・ 

□*可愛く無い*
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「そぉぉじぃぃーー!!!」




そのまま飛んで行くのでは無いかと普通の人間なら驚愕するような力強さで部屋の襖が開け放たれる。

そんな仕打ちを受けた襖も幸いな事にその役目をきちんと果たし、ピシャリと激しい音を出しても壊れる事は無かった。


部屋の主の図太さに似たか。




「なんなんですか…五月蝿いなぁ……折角昼寝しようと思ってたのに。」




図太いのかふてぶてしいのか、その部屋の主である沖田総司は畳に寝転がった体制のまま怠そうにぼやく。




「五月蝿ぇじゃねぇよ……なんならこのまま永眠させてやろうかぁ?」




激高し、怒りでワナワナと震えている土方は引き攣りった怪しげな笑みを浮かべて、のっそりと部屋に足を踏み入れた。


沖田にとっては、予想通りの人物が予想通りの怒り具合で訪問してきたのだから大して気にもしない。




「嫌ですよ。貴方に殺されるなんて真っ平御免です。私闘は厳禁のはずですよね?局中法度違反で僕が介錯してあげましょうか?」


「俺を怒らせてんのは何処のどいつだ!それにお前にだけは介錯されたかねぇ!どうせ俺の時はわざとし損じるだろテメェ!」


「そうですかねぇ。あぁ、涙で目が霞んで手元が狂うかもしれないですよね。」


「いけしゃあしゃあと見え透いた嘘をつくんじゃねぇ!クソガキが!」




怒り心頭、といった様子でずかずかと部屋に乗り込む土方を見ても、沖田は微動だにしない。

寝転がったままで不敵な笑みを浮かべている。




「それで?一体何の用ですか?」



わかりきっているくせに素知らぬふりをして質問してくる沖田に土方の眉間のシワは深くなるばかりだ。

寝転ぶ沖田の顔の前で腰を屈めて座る。


現代で言うヤンキー座り的な。




「しらばっくれてんじゃねぇぞ…?俺の部屋の座布団の上に鼠の死骸を置いたのはお前だろ!」




凄みを効かせて睨んでくる土方の顔がやたらと近い。

怒りで頬が紅く染まっているのが妙に可笑しい。




「あぁ、あそこ土方さんの部屋だったんですか?たまたまですよ。」


「たまたまであんなにご丁寧に座布団の真ん中に死骸を置くのか?テメェは……。」




土方が言う通り、勿論たまたまなんかじゃ無い。

全てわざと、わざわざ貴方の部屋に運んだんです。



僕って律儀でしょ?




「猫がくわえて持ってきたんですよ。そのまま庭に放置するのも可哀相だから拾ってあげたんです。」


「だから、何でそれを俺の部屋に置くんだよ!テメェで埋めてやりゃいい話じゃねぇか!」


「えっ、だって土方さんいつも勝手な行動するなって僕に言ってるじゃないですか。だから命令通り指示を仰いだだけですけど?」


「……っー!テメェは減らねぇ口だな!屁理屈ばっかりこねやがって!!」




いつまで言い争っても謝罪など出て来そうも無い沖田に、土方はもどかしそうに頭をガリガリとかいた。


沖田はこの上無く楽しそうに笑顔を湛えている。



そんな沖田に土方は魂まで出てしまいそうな、深ーーいため息を吐き出した。



 
 
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