・長・
□■思えば呪う■
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「いい加減、我が儘な振る舞いは自重なさったらいかがですか?」
もう下がっていいと言ったのに、この場から立ち去らない山崎は苛立った声を押し殺して呟く。
その言葉にやっぱりな、という思いが込み上げてチリチリと胸が焼けた。
「それは土方さんからの命令?それとも君の意見?」
見たくないと思いながらも視線を山崎に向ける。
かなり距離を取った場所から自分を睨んでいる厳しい視線が突き刺さっていた。
真っ直ぐで曇りの無い眼差しが腹立たしくてならない。
あんたが悪いと、責められている目。
「副長は何もおっしゃられていません。今のは俺の個人的意見です。」
だろうな、と思う。
だからさっきより自分は不快なのだ。
自分達の事に部外者が偉そうに口を挟んでくるのは不愉快だ。
ましてや、相手があの人の信者だから。
「だったら僕がそれを聞く必要は無いよね。余計なお節介はやめてくれない?」
「確かに自分が口を挟む事では無いかもしれません。ですがこのままつまらない意地を張り続ける事に何の意味があるのですか?」
殺気さえ漂う威嚇の眼差しを向けているのに山崎はまったく引くそぶりも見せず、食い気味で反論を返してくる。
ずっと溜め込んでいた不満を今日こそ言ってやるとでも思っていたのだろうか。
自分に憶する事無く、自分が向けているのと同じ位の厳しい眼差しを逸らそうとはしない。
ーー鬱陶しいよ……本当に。
石の上に置いている手に知らず知らずに力がこもる。
まるで石を削ろうとしているかのように小刻みに指が震えている。
「別に意地なんかじゃ無いけど?回りくどい言い方は止めたら?土方さんに迷惑をかけるなって、僕の存在が邪魔だってはっきり言えばいいんじゃない?」
苛立ちばかりが募っていく。
この苛立ちが怒りだけでは無い自分の感情が不快で堪らない。
この苛立ちは不安や恐怖に似てる。
襲って来るざわめきに言いようの無い恐怖を感じてまた、指が震えた。
ーー馬鹿馬鹿しい。
自分の感情の原因がわからない。
だからこんなやり取りは早く終わりにしたかった。
この場から逃げ出したい気分だ。
きっと自分は今酷い顔をしているだろう。
苛立ちと戸惑いに溢れた鋭い眼差しを山崎に向け、まるで憎らしい敵に対するような顔をしているはずだ。
なのに、山崎は一切臆さない。
まったく自分に怯えてもいない。
何故なのだろう。
「……沖田さんは今の状態のままがよいと、そう思ってるんですか?」
けっして強くは無いのにしっかり耳に響く山崎の声が自分に問い掛けてくる。
沖田は小さく苦笑いを浮かべた。