・短・ 

□*欲張り*
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合わせる肌に熱が篭る程。


虚しくなるのはいびつだからか。



「……あっ、……く……。」




のめり込めばのめり込む程。


欲しくなるのは欲望なのか。



意味など無い行為は存在しない。
それなのに今の関係に理由は無い。


お互いがお互いだけ、とは言えない。


一人に全てを捧げられる程、守る者は少なく無いから。



なのにこんなに貪り合って。


いびつな俺達の無意味な行為は止む事が無い。



ーーあんたは、何に捕われている?


ーー俺に、じゃないだろう?




「……左之っ、……。」




名前を呼んで、答えて。


なのに、何も繋がっていない気分だ。



そこに理由が無いからなのか?




「……もっと見せろよ。」




掠れた声で自分を呼ぶ声に苛立ちを含めた要望を投げる。

この言葉の意味を履き違えて笑うあんたの顔は快楽と苦痛とを交互に見せる。


律動に合わせて揺れる唇は言葉をうまく紡げない。




「……みせて……る、だろ……?」




これ以上、どんな姿を晒せと言いたいのかと問い掛けるような眼差しに更に苛立ちが募る。


確かに体は晒してる。

あんたのこんな姿を拝めるのは自分一人だけだろうと思う。


体の隅々まで撫でても唇を這わせても足りない。



こんな行為をする意味が、知りたい。




「……そんなに自分を痛めつけて楽しいのか?」




何故、自分に体を明け渡すのか。


幾人もの命を盾に守り抜いた命なのに。

幾人もの命を奪い取って生き延びた命なのに。


その死線を切り抜けた体を淫らに晒して肉を打ち込ませて快楽と苦痛に顔を歪めている。


その熱い吐息は、何の為だ?




「……痛いだけじゃ、ねぇだろ?」




皮肉めいた顔で笑いつつ、誘うような眼差しを向けて指を絡ませてくる。

欲望に流されてしまえばいつもと同じ結末だ。


ただその体に夢中になって果ててしまえば意味も理由も必要無い快楽だけを貪れる。



でももう、それだけじゃ足りない。


あんたの理由が知りたい。


この繋がりに意味が欲しい。




「全部晒してくれよ。」




ーー俺が必要だ、と言うなら。


ーーこの繋がりが必要だ、と言うなら。



俺に心も見せろ。


あんたの心が欲しいとまでは言わないから。


本当に吐き出したい思いを口にしてみろ。



俺はそれを受け止めてやりたいと思っているから。




ーー俺が必要だ、と言うなら。




「……左之。」




ーーこの繋がりが必要だ、と言うなら。




「……もっとお前を寄越せ。」




欲しいのは、本当に俺か?

逃げる、ごまかす理由が俺だろ?
あんたの心は。



今、何処だ?




「何も考えたくねぇんだ。……早く。」




その言葉に抗える程、俺は理性が立派じゃねぇ。


また、いつもの欲望に流されるだけのいびつな関係。


それをあんたは。




求めてるのか。




 
 
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