・短・
□*枯れ焦がれ*
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はらり、はらりと枯れ葉が朽ちて行く。
枝にしがみつく力を使い果たしその役目を終えたように、ただ地面へと向かうその身を風に預けてゆらゆら揺れる。
水気を失った茶色の姿は何の意思も無く、終わりを告げた己の生に感慨も無しに最後は物悲しい軽い音をたてて、そっと地に同化した。
ーー枯れる。
枯れるというのはそういう事だ。
そこにはもう望みも憂いも無い。
ただ、朽ち果てただけ。
役目を終えて枯れたのなら本分を全うしたのだから悔いなど無いだろう。
なのにその姿を目にしている自分が、何故か悲しみや淋しさを感じるのかは不明だ。
例えるなら、桜。
その姿、美しいまま匂い立つままに散り行ける桜なら風に舞うという表現が適している。
生命力を保った絶頂の姿を自らで絶つように大量の花びらを散らせて踊るのなら死を謳歌しているように見えて壮大だ。
武士の生とは。
武士の死とは。
桜のようで無ければ為らない。
それは自分の望みであり、いつでもその覚悟はある。
なのに、目の前のこの枯れた落ち葉に感慨を深めているのはなんなのだろうか。
それはきっと武士では無い、生き様の志とはまったく別の自分自身に宿っている無様な欲望。
そのせいだ。
この先、何が起きようとその欲を曝す事は決して無いだろう。
ましてや胸の内に宿るこの感情を知られてしまえば自分は死ぬのと同じ事。
燻り続ける想いを、殺して殺して封じ込めて。
早く枯れて、朽ち果ててしまえと願っている。
あの枯れ葉のように。
こんな不要な欲望は枯れて行けばいいと願っている。
なのに欲望を自覚し認めてからは、日に日にその想いは自分を蝕み支配して行く。
枯れる事を望んでいるのに。
焦がれて行く想い。
自分の命も。
自分の全てを捧げた人に。
恋い焦がれているなど。
浅はかな自分に嫌気がさすのだ。
何故、尊敬だけで終われ無かったのだろうか。
何故、慕うだけでは終われ無かったのだろうか。
何故、欲しいと。
何故、焦がれるのだと。
自分への自問自答が尽き無い。
想いを欲望を。
押し殺し続けたならばいつか枯れて。
朽ち果てる己の心を冷静に見つめられるようになるだろうか。
あの、落ち葉のように。
ただ枯れるように。
あの人への想いを。
終わりに出来るのだろうか。