・ 企画小話 ・

□□普通の生活□
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□バカが愛情に変わる時□→続編です。




人それぞれ、『普通』って違うらしい。



僕にとっては『普通』でも。

他人からすれば『普通』じゃ無いらしい。


でも、それを『普通』だと言ってくれる人がいたら。


それって僕達にとっては『普通』で。



他人にはわからない事なのかな?


当たり前にあるから気付かない『普通』と向き合うなんて難しい。


そこに何か『普通』じゃ無い理由を見付けた時。


『普通』は『普通』じゃ無くなる。



それは、いい事?悪い事?



『普通』が変わると何になるんだろう。

『いつも』が変わると何になるんだろう。



例えば、『特別』とか?









「……またか、総司……。」



自分なりの有意義な昼休みの過ごし方。

昼飯を簡単に済ませたら教室のベランダを占領して、昼寝をする。

『いつも』の行動をしている沖田に、またかと呆れに似た声を掛けて来る『いつも』の人物がこちらを見てる。



「何、一君。僕に用事?」



寝転がるアスファルトには可愛い色柄のブランケットが数枚敷いてあり、制服を汚す事は無い。

ここで昼寝をするようになってから、クラスの女子が自分の為に持って来てくれたからだ。


なんでなのかは、興味無い。



「何か用事か、では無い。あんたのポケットに入っている物、出して貰おう。」



教室の窓から顔を出して自分を見下ろしてくるのは、泣く子も黙る薄桜学園風紀委員兼、自分の友人の斎藤一だ。


斎藤は冷めた目つきで手を差し出し、言葉通り何かを出せと催促してくる。


沖田は寝転んでいた体を怠そうに起き上がらせて、首を傾げた。



「なんの事?僕は風紀委員に見付かるとまずい物なんか隠して無いし、一君に何も借りてなんかいないよ?」



身に覚えの無い容疑をかけられて、沖田は不思議そうな顔をしている。

自分が何か悪い事をしたという自覚が本当に無いからこそ、何を言われているのか皆目検討がつかない。


そんな沖田を見て、斎藤は呆れたようにため息を吐き出した。



「とぼけるな。あんた土方先生の財布を持っているだろう。これは立派な窃盗だぞ。」



呆れと苛立ちが混じる口調でそう言われて、沖田は話の内容をやっと理解した。

あぁ、と気の無い返事をしてから、ブレザーのポケットをまさぐる。



「なんだこれの事か。もしかして一君、あの人に財布探して来い、とかこき使われたの?毎度毎度、人遣い荒いよねぇあの人。」


「騒ぎの元凶のあんたが偉そうに言うな。自分が何をしているかわからんのか?」



まったく悪びれも無く、拝借した土方の財布をあっさり差し出した沖田に、信じられないと言いたげな苦い表情で斎藤は詰め寄る。

乱暴気味にその手から財布を奪った。



「別にいつもの事じゃない。」



そう言って、沖田はニッコリと笑う。


自分にとっては別にいつもと変わらない『普通』の事。


あの人の財布から昼飯代を拝借するのなんて、日常茶飯事。



悪いとも、ヘンだとも思わない。



「……『いつもの事』と言い放つ、あんたのその神経がわからん。」



それなのに毎回、顔を歪める斎藤を見ていると不思議になってしまう。



ーー別にいつもの事なのに。


ーー何がそんなにおかしいの?




そんなやり取り『普通』だし。


あの人と僕にとっては『いつも』の事だし。



何か、ヘン?



 
 
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