短編
□暁降ち
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ふと、日が昇らない内に目が覚めた。それからどれだけ努力しても、再び眠りにつくことが出来なかった。
「…………」
おかしい。何時もは日が高く昇るまで寝ていられる自信があるというのに。
近くにある時計を見ると、短針が4時を過ぎた所だった。
仕方がなくリウはベッドから抜け出て、朝になるまで暇を潰す事にした。
暇を潰すといっても、この時間に出来ることは限られているが。
さて、何をしようか。
「本……いや、テレビをつけるか」
パジャマ代わりのジャージのまま、居間に直行した。まだ少し肌寒いため、ブランケットも持っていく。
何かやっているか……あてもなくチャンネルを切り替えてみるが、流石にこの時間はTVショッピングしかやっていなかった。
「……やっぱり本読むか」
テレビを付けたままで、今度は書庫に向かった。
適当に数冊を取り出し、それをもってまた居間へと行く。そして、テレビをBGM代わりに読書を始めた。
ぱらり、ぱらり。ページをめくる音がテレビの音に負けない位、やけに大きく聞こえる。
遠くでバイクの音が聞こえた。新聞の配達員だろうか。
「――眠れないのか?」
不意にソルの声が横からかかった。
「んー。眠れないっていうか、目が覚めたって方がしっくりくるかな」
「ふむ……」
リウは本を閉じると、軽く伸びをした。思わず欠伸もでる。
「あ、でもまた眠くなってきたかも」
活字を見ていたからだろうか。瞼が重くなってきたため、テレビを消してブランケットを体全体にかけて、眠る体制をとる。するとソルが狼の姿になり、頭の近くに座り込んだ。
「頭を」
「……ん、何?」
「俺の腹に頭を乗せるといい」
リウは少し起き上がってソルを見ると、もそもそと近づいてその言葉に従った。
「あー……あったかい。もふもふ」
固いように見えるソルの毛は、触ると意外にも軟らかい。そこに頭を突っ込んだら、あっという間に眠ってしまいそうだ。
「今度からソルの腹を枕にしようか、な……」
「おい」
「…………くぅ……」
ソルが反論する間もなく、リウは再び夢の中へと行ってしまった。
「――………まったく」
ソルはふうっと息を吐くと伏せの体勢になり、組んだ前足に頤を乗せた。目だけをカーテンの隙間から覗く窓にむける。
「もう、夜が明けてきているのか……まぁいいか」
そう言って、ソルも同じように目を閉じた。
暁降ち
ぼんやりと明るくなってきた室内で規則正しい寝息を聞きながら、獣はどこか満足げな表情をしていた。
頤(おとがい)
下あごのこと
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