短編

□狐神楽
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「って入りで、舞を始めたいんだけど」
「却下」

 街のど真ん中にある神社。そこに、3人の人影があった。
 そのうち2人は、やや長身の狐の妖。もう1人は、妖狐よりも小さな少年。

「なんでさ主ぃー!いいじゃんか!」
「白蓮、余り騒ぐと主が困ってしまうだろう」

 妖狐――白蓮は地団駄を踏みそうな勢いで抗議した。
 対するもう一方の妖狐――黒蓮は白蓮よりも落ち着いている様子で、片割れをなだめている。
 そんな2人を縁側に座って眺めていた少年――六花はため息をついた。

「それじゃあ、俺が無理にやらせているような感じになっちゃうだろ」
「う」
「一応、2人の出る祭に俺も参加するんだ。前口上がそれじゃあ、な」
「うぅーー…………」

 的確な回答をされて、白蓮は完全に黙り込んでしまった。

 今年の夏、妖同士で祭を行うそうだ。
 そこでの出し物として、白蓮と黒蓮が舞を踊るらしい。

「ところで主。主はどうやって参加するつもりなのだ」

 黒蓮が胡乱げに尋ねてくる。が、六花は大して気にした様子は無く、きっぱりと答えた。

「ん?変装して参加するよ」

 狐の舞など、2人を式に下しても滅多に見ないため、自分も興味本位で参加してみようと考えていた。
 とはいえ、妖の祭に一介の人間が参加しようなど言語道断。あっという間に退場させられるだろう。
 だからこそ変装は必須なのだ。

「別に変装しなくても、素のままで大丈夫だと思うけどねぇ。俺は」

 ずっと黙っていた白蓮が横槍を入れてきた。

「だって主、本性に戻れば良いじゃん?神の血も混ざってるんだからバレないバレない」

 一瞬の沈黙が流れる。
 だがその提案をした当の本人は、あれ?と首を傾げている。
 やがて、大きなため息をついた六花が口を開いた。

「……………確かにそうだな」





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