THE ENDLESS WORLD
□第6夜
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話を一通り聞き終わり疲れたのか、クロスに寄りかかって眠り始めた少年。
……ガキにはかなり難しい話をした筈なのに、顔色を少し変えただけで何も問わなかった。
男は複雑な表情をして少年、リウを改めて見遣る。
およそ自然の色ではない灰黒色の髪。
恐らく、イノセンスと適合したために変色してしまっだろう。
流石のクロスも、眠った子供を起こしたくはないようで、そっと静かに頭を撫でた。
噂については、彼の瞳を見た瞬間になんとなく分かってしまった。
暗い、燻し銀のように底光りする瞳。
光が反射すると、それこそ銀のような光沢を放つ。
暗闇でこの瞳を見たら、かなりゾッとするだろう。
「化け物、か」
だが所詮噂話。勝手に化け物扱いされてもコチラが困るだけだ。
だから数億のアクマと戦ったクロスにとって、それが酷く滑稽な話だった。
軽く嘆息をする。
「世界には"化け物らしい化け物"がわんさかいるっつーのにな」
だが、今そんなことを言っても後の祭りで。
「これからは、そんな事も言ってられねぇンだけどな」
後に彼が行くことになる場所を思い出し、クロスは苦虫を噛み潰したような顔になる。
この子供が何処まで理解しているのかは分からない。だからこれから、彼の心が壊れてしまわないか心配だったのだ。
クロスはばりばりと、頭を乱暴に掻き乱した。らしくない考えをしてしまった。
だが目の前で両親を殺されたリウは、必ず心の何処かに亀裂が生じている。心が壊れてしまう時は、遅かれ早かれやってくる。
だから彼には、"自分"という拠り所が必要だ。
あの瞬間を目撃したのは奇跡に等しかった。遅ければ、彼が完全に自身を喪失していた。
ふと、窓の外を見る。
外は彼らの心情とは裏腹の快晴で、男はため息をついた。
ひとつの小さな焔は
傷を負った心を抱え
紅き術師と邂逅する
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