THE ENDLESS WORLD
□第5夜
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開けた途端鼻腔を微かに、しかし確実に鉄錆の臭いが掠めた。
瞬間、クロスは悟った。
「……殺られたか」
軽く舌打ちをすると、そのまま奥へと進んでいった。
少しずつ強くなる鉄の臭い。
こうして我が物顔で邸内を歩いているが、やはり人の姿を捉えることが出来なかった。
試しにと、近くにあった部屋へ入ってみる。するとドアを開けた途端、もわっと煙のような物が流れ出ていく。
その部屋の中心には、服のみが不自然な形で落ちていた。
「やっぱりアクマの仕業か」
この邸のみをピンポイントで狙ってきたらしい。
つまり
ここにはイノセンスがあり、それを知った"伯爵"がここにのみアクマを送った。という事だ。
声や物音が全く聞こえない事も考えると、もう邸には『生きた人間』が居ないのだろうか。それとも、事前に察知し逃げ延びているのだろうか。
となると、この邸内にあるはずのイノセンスは。
刹那
『あ"あ"あ"あ"あああああああああああああああああああァァッ!!!!!』
「!」
甲高い、悲鳴に似た叫び声。続いて邸全体が揺れ、何かが破壊される音が鈍く響く。
急いで部屋を出ると音の聞こえた方を見た。
「まだ人が居たのか……!?」
これはクロスにとって予想外の事だった。
それっきりまた静かになり、幾ら耳を澄ましても何も聞こえなくなった。
「―――ティムキャンピー」
クロスがそう呟くと、男のポケットから何かが飛び出した。
金色のゴーレム――ティムキャンピーは、主人の言葉に首(というより身体全体)を傾けた。
「今の声の聞こえた場所の特定をしろ。
そしてそこへ案内するんだ」
――…‥・
―――…‥・
――――…‥・
―――――…‥・