THE ENDLESS WORLD
□第1夜
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少年が気付いたときには汽車の中にいた。
隣には紅い長髪の男が、腕を組んだまま寝ている。
紅
そうだ、思い出した。
今日もいつも通り弟を探して街を走り回り、結局今日も見付からずに家へ帰った時だ。
扉を開けた瞬間、違和感を感じた。
『あれ………?』
かすかに鉄の臭いがするのだ。
いや、鉄というよりも錆の臭いに似ている。気がする。
少年は不思議に思いながらも、両親が居るであろう部屋へと向かった。
進むたびに強くなる鉄の臭い。
何故か強い恐怖を覚えた少年は、その恐怖を振り払うように走り出す。
部屋の前まで来たときには、頭がくらくらするほどの強い臭気となっていた。
そして扉を開けた時、目の前に飛び込んできたのは………。
そこまで思い出して、少年は身震いした。
あの部屋に居たのは、自分の両親"だったもの"と………
およそ、人とは違う何か。
「―――ん、気付いたか」
「!!」
頭上から声が降ってくる。
ビックリして上を見ると、隣の男が起きてコチラを見ていた。
「あ…えと………」
突然声をかけられ、どう返事すればいいか分からない。それどころか、男の名前や汽車に乗っている理由も分からない。
というか、この人は誰だ。
そんな少年の戸惑いをよそに、男は一人話し始めた。
「生き残っていたお前がイノセンスの適合者だったとはな。
俺が来たときにはAKUMAは壊れていたし、おおよそお前がやったんだろう」
「え」
話が見えない。というより、突然出た『あくま』という単語は何なのだ。
あの時部屋に居た『人ならざる者』の事だろうか。
それに『いのせんす』は、父が前に呟いていた単語だ。
更に男は続ける。
「寄生型か……ともあれ、みっちり鍛えねぇとな。覚悟しとけよ」
「鍛えるって、何を」
「お前の事に決まっているだろ」
ちょっとまて、自分はそんな事望んではいない。
第一、なんで知らない人から鍛えられなければいけないのだ。
そう言うと、男はこう言い切った。
「これから自分の身を守るために決まっている」
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