THE ENDLESS WORLD

□第15夜
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 外は雨が降り、視界に入る全てが霞んで見える。
 人の通りは殆どなくなり、雨音だけが辺りに響いている。

「そろそろ深夜だな」
「……ん」

 2人は教会にある無数の部屋の一つを借り、そこで火玉が現れるのを待っていた。が、このタイプの任務に慣れていないリウは、早々に眠ってしまっていた。
 ヴェルダは椅子にかけていた団服を手早く羽織ると、ベッドに寝転がっている少年を見る。

「眠い……」
「そりゃあそうだろう。今までグースカ寝てたからな」

 そのリウはその場で伸びをすると、軽く欠伸をした。団服は着たままだ。

「おら起きろ。辺りに火玉が現れたか見に行くぞ」
「ふぁぁ………あれ?何時のまにベッドに」
「窓辺で寝たら身体が痛むだろうが」

 ヴェルダはリウが起き上がるのを見ると、部屋のドアを開けて廊下の様子を窺った。その様子を見たリウは、慌ててベッドから降りるとヴェルダの横に並んだ。

「あ、待って」
「廊下は特に変わった事が無いな」

 男とドアの隙間から様子を見ようと、リウは無理矢理ヴェルダの前に割って入っていく。

「おい」
「何も無いね」

 そのまま部屋を出ると、聖堂のある方角へ駆け足で行ってしまった。

「ったく………団体行動ってのを知らないのかアイツは……!」

 軽く苛立ちながらも、先に行ってしまったリウを追って、ヴェルダも聖堂へ向かった。


 カツン、カツン、と足音が廊下に響く。所々に備え付けられている蝋燭が行く先を照らしているため、幸いにも迷うことなく進む事ができた。

「そういえば、さ」
「あ?」

 唐突にリウが話し掛けてきた。

「前に言っていた、俺の噂って何なの?」
「あぁ、それか」

 ヴェルダは暫く考えるそぶりを見せてから、“噂”について話し始めた。

「最初は『期待の新人』なんて話が上がってたな。なんせあのクロス元帥の弟子だからな、お前。
 暫くしてから『手負いの獣』とか『血濡れの堕天使』とか、一緒に任務行った奴等が騒ぎ始めた」
「……」
「俺の見る限り、そんな凶悪には見えねぇけどな」

 カツン、カツン、と廊下に響く足音。備え付けられている蝋燭の明かりは、途切れることなく行き先を示している。

「………俺」

 唐突にリウが口を開いた。ヴェルダの方は一切見ず、視線はちろちろと燃える蝋燭の火に据えられている。

「毎回任務の……ううん、任務中の戦いの時の事、あんまりよく覚えてないんだ」

 ヴェルダはリウを見下ろした。リウは蝋燭を見ているため、どんな表情をしているか分からない。

「最初は覚えているんだ。アクマを見つけて、戦いになって……でもそこからプッツリ切れてるんだ」
「……」
「でもこれで分かった。噂も何なのか分かったし、有難うヴェルダさん」

 リウがヴェルダを見上げる。その表情は、ヴェルダが思っていたよりも晴れやかな表情をしていた。





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