THE ENDLESS WORLD
□第10夜
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「……94%」
頭上で声が響く。その声の主は、およそ人には程遠い者だった。
――ヘブラスカ。彼女はそう呼ばれているらしい。
「ふうん……適合したての割には、適合率が高いですね」
見下ろすその先には、先刻クロスと共に会った男が、バインダーを片手に少年を見上げていた。
数十分前
クロスと別れたリウは、今度は室長と共に昇降機で地下へ降っていた。曰く、これから会わなければいけない人物が居るらしい。
行った先には、仄明るい光を放つ人ならざる者がいた。だが、アクマの様に禍々しい雰囲気は持っていない。
そしてあれこれ考えている内に、予告も無しにつりあげられて今にいたる。
「………っ」
ヘブラスカの手(?)が、イノセンスを中心に体内へ入り込んでいる。そしてそれらは何らかの方法で、リウのイノセンスを隅々まで調べているのだ。
「う………」
体内を探られるような、そんな感覚。何ともいえない不可思議な感覚に、リウは身震いを覚えた。
「大丈夫ですよリウ。貴方と貴方のイノセンスの適合率をみているだけですから」
「適合……率………?」
「そうだ………私は、君とイノセンスの状態を…みているだけだ……」
ヘブラスカはそう告げると、リウの体内から手のようなものを抜き去り、昇降機の上にそっと降ろした。
腰が抜けてしまっているのか、リウはヘブラスカに降ろされると途端、床に座り込んでしまった。
「リウ・ストラス……
お前のイノセンスは、何時か時空を駆け巡る寵愛者を生み出すだろう」
「時空…?寵愛者……?」
「面白い結果が出ましたね、ヘブラスカ」
室長がリウに近付き、手を差し延べた。
「ヘブラスカはイノセンスの守護者。そして彼女は、他のエクソシスト達の未来を“予言”出来るのです。
……大丈夫?立てるかい?」
「あ…………はい」
おずおずと、差し延べられた手に己の手を重ねる。そのまま引っ張り上げられ、つられて立ち上がった。
「有難う、ございます」
「いいですよ、お礼なんて」
付いてしまった埃を払いながらお礼を述べると、やんわりと拒まれた。
その後「あ、そういえば」と声をあげると、改めてリウに向き合った。
「まだ私の名前を言っていませんでしたね」
「……“しつちょう”じゃないの?」
此処へ来る前にクロスからそう聞いていたリウは、不思議に思ってそう尋ねた。
その“しつちょう”は、少年の言葉を聞いて暫く何の事だか分からず、頭に『?』を浮かべていた。やがて言葉の意味を理解すると吹き出し、笑い混じりに少年に話した。
「それは肩書きだよ。
私自身の名前は、カルシス・ルファレーといいます」
改めてよろしくね。と笑みを浮かべながら、室長――カルシスが言った。
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