桎梏の悪魔と花嫁
□接触-contact-
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「あんたは一体何したい訳なのさ…………」
「……………」
数時間前―…
帰宅したリュウは、家の中に見知らぬ人が居るのを見て目を丸くした。
黒いコートに身を包み、異質な気を放つそれは、明らかに街の者ではなかった。
体格から男だと判断出来る。だがリュウから見て後ろを向いているため、顔は分からない。
何と声をかければ言いのか分からず立ち尽くしていると、不意に男から話し掛けてきた。
「―――随分と質素な暮らしをしているんだな」
「……へ?」
「お前には、もっと華やかなものが似合うというのに」
「ちょ、ちょっと待って。何の事を言いたいんだよ」
口を開いたと思えば、訳の分からない事を言い始めた男。
確かに自分の家は、他と比べると質素で地味だ。だからといって、見ず知らずの人にそれを言われる筋合いはない。
だが奇妙なことに、この男から親近感を感じるのだ。
会ったことなど、過去一度も無い。はずなのに、今し方声を聞いた瞬間、全身から力が抜けていくような感覚がした。強張っていた身体が解れていくような、そんな感覚。
これは一体どういうことなのだろうか。返答に困っていると、男がリュウの方を向いた。
「あ………」
男は精悍な顔をしていた。そして肌は驚くほど白く、その肌を覆うように、黒い髪が顔の半分程を隠している。
その髪の間から、蒼色の瞳がちらちらと覗いている。瞳は光源が無いにもかかわらず、濡れたような光を帯びているように見え、リュウは我知らず身震いした。
だが同時に『綺麗だ』という、場違いなことを考えてしまった。
男はリュウの方へ歩み寄り、距離を縮めてくる。
やがて目と鼻の先にまで迫ってきたとき、リュウが反応する前に、男はリュウを抱き竦めていた。
そして、
「………ッ!?」
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