灰色のアイツ
□第5刻
1ページ/1ページ
数日後
久しぶりに暇な時間が出来た竜平は、人がごった返す繁華街へと足を運んでいた。
「あの店は前に行ったしなぁ……あそこは…………キョーミ無し」
空っ風の吹く午後。寒さに身を震わせながらも、何か興味のそそられる物が無いかとうろうろする。
「新しい店とか、今頃あったかな」
あれこれ考えながら歩いているうちに、交差点まで来たので止まった。この交差点は特に人が多いため、あっという間に人だかりができる。
「あとは――――ん?」
人だかりの中。前方のかなり離れた場所に、銀色の髪がちらりと見えた。
珍しいな。と思いながらも、何か引っ掛かりを覚えて首を捻る。
銀色の髪――最近、何処かで見た気がする。
「銀色……………あっ!!」
信号が青に変わって人が流れはじめたとき、ようやく思い出した。
数日前、獣に運ばれていた男だ。
確かめる為に急いで追いつこうとしたが、反対側から来る人の波でうまくいかない。
気付いたときには、あの銀色を見失っていた。
「あ、しまった。どこ行った?」
信号を渡りきり、一旦立ち止まって辺りを見回す。が、それでも見つけることが出来なかった。
見間違いだったか………。諦めて歩きだそうとしたとき、視界の端で今度は奇妙なものが動いた。
目を向けてみると、丁度狭い道へと入る所だった。
「あれは………妖か?」
人の姿をしているが頭部からは角が生えており、場にそぐわない和装をしている。しかも着流し。
妖気を殆ど感じないから、見鬼を持つもの以外には見えないようにしているのだろうか。
それにしても、こんな時間帯に妖が闊歩しているのは珍しい。まだ日が出ているというのに。
軽くデジャヴを覚えながらも、気になって後を追い掛けてみることにした。
.