灰色のアイツ
□第1刻
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今日は課題が余り出ていない。だから帰りに、ちょっと寄り道をしてみたり。
夕方になり、人通りの疎らな道をとろとろと歩いて行く。
「あーあ、毎日毎日課題とかつまんねーなぁ」
進学するためとはいえ流石にキツイ。専門の大学に入るつもりだけど、容姿の関係で推薦は無し。
まったく、何でこんな髪色になってしまったのだろう。
ま、理由は大体分かっているんだけどな……。
金の色に輝く髪を揺らしながら、林 竜平は溜め息をついた。
「………ん?」
路地に入り角を曲がったとき、妙なものが視界の端に入った。気になって後を追いかけてみたが、暗がりを動いているようでよく見えない。
気付いたときには人通りの無い、袋小路に入っていた。
ズ、
ズズ、
前方で、何かを引きずる音がする。
突然の事態に備えて構えるが如何せん、防護札を持ち合わせていない。何時もはポケットなどに忍び込ませているが、今日に限って部屋に置き忘れてきてしまった。
竜平の本家は陰陽師を生業としている。本家を出ていく前からしつこく『札を常に持っていろ』と言われてきていた。竜平はそんなことを思い出して、苦虫を噛み潰したような表情になる。
正に、こんな事態にならない為である。
「さて、どうしようか………?」
風鳥を召喚するか。いや、あれを出すには時間がかかり、対処に遅れる。先手を取って縛術を放つのも良いが、相手に敵意が無いと逆にこちらが加害者になってしまう。
打開策が見付からない。
「親父だったらこんな時こそ、一発で終わらせられるんだろうな」
それこそ、片手でひゅっと印を飛ばしてはい終了。なんて。
そんなことを考えているうちに周りに目が慣れてきて、相手の姿が見えてきた。
「……獣か?」
気付いていないのか、こちらに背を向け何かを運んでいるようだ。少し動いて運んでいるものを確認して、瞠目した。
それは、一人の人間だった。