灰色のアイツ

□第1刻
1ページ/1ページ



 今日は課題が余り出ていない。だから帰りに、ちょっと寄り道をしてみたり。
 夕方になり、人通りの疎らな道をとろとろと歩いて行く。

「あーあ、毎日毎日課題とかつまんねーなぁ」

 進学するためとはいえ流石にキツイ。専門の大学に入るつもりだけど、容姿の関係で推薦は無し。
 まったく、何でこんな髪色になってしまったのだろう。
 ま、理由は大体分かっているんだけどな……。

 金の色に輝く髪を揺らしながら、林 竜平は溜め息をついた。





「………ん?」

 路地に入り角を曲がったとき、妙なものが視界の端に入った。気になって後を追いかけてみたが、暗がりを動いているようでよく見えない。
 気付いたときには人通りの無い、袋小路に入っていた。

ズ、

ズズ、

 前方で、何かを引きずる音がする。
 突然の事態に備えて構えるが如何せん、防護札を持ち合わせていない。何時もはポケットなどに忍び込ませているが、今日に限って部屋に置き忘れてきてしまった。
 竜平の本家は陰陽師を生業としている。本家を出ていく前からしつこく『札を常に持っていろ』と言われてきていた。竜平はそんなことを思い出して、苦虫を噛み潰したような表情になる。
 正に、こんな事態にならない為である。

「さて、どうしようか………?」

 風鳥を召喚するか。いや、あれを出すには時間がかかり、対処に遅れる。先手を取って縛術を放つのも良いが、相手に敵意が無いと逆にこちらが加害者になってしまう。
 打開策が見付からない。

「親父だったらこんな時こそ、一発で終わらせられるんだろうな」

 それこそ、片手でひゅっと印を飛ばしてはい終了。なんて。
 そんなことを考えているうちに周りに目が慣れてきて、相手の姿が見えてきた。

「……獣か?」

 気付いていないのか、こちらに背を向け何かを運んでいるようだ。少し動いて運んでいるものを確認して、瞠目した。

 それは、一人の人間だった。














[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ