灰色のアイツ

□第9刻
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「う…………」
「……」

 目の前には神気を発する神の子(と思う)。服装はやはり和装だが、普通の人間の姿となんら変わりがない。
 変わりはないのだが、彼の発する神気が思っていた以上に強く、竜平は完全に畏縮してしまっていた。

「そんなに硬くならなくていいのに」

 神子は気さくに話し掛けてくる。これだけを見れば、今時の中・高校生と変わりないがいかんせん、辺りの神気がその思考を否定する。

「えー………
 俺みたいな底辺の陰陽師が……高貴な貴方様とこうして対話でき…………えーと」

 まず、慣れない敬語を使い敬意の念を言葉に乗せて神子に伝える。が、上手く舌が回らず、途中で何度も噛んでしまった。
 そんな様子の竜平に、神子は溜息をついた。

「だーかーらー、そんな硬くなったり畏まったりしなくていいってば!」

 少々荒い語調で叱咤され、竜平が更に身を強張らせた。それを見た神子が更に何か言おうとしたとき、妖狐から横槍が飛んできた。

「……主、その本性の姿を解けばいいと思うのだが」
「俺も黒兄にさんせーい。
 ほら、竜平も主の神気に怯えてるよ?」

 正しくは怯えているのではなく、畏縮しているだけなのだが。
 それを聞いた神子はハッとしたように固まり、数秒後にぽつりと呟いた。

「…………………あ、そうか。それでなのか」

 瞬間、神気が収縮していき、神子の身の内に収まっていく。同時に姿も、先程のものとは別の姿へと変化していった。

「これでいいかな?」

 黒髪黒目にラフな服装といった、“何処にでもいそうな少年”の姿に変わった。
 辺りには神気の残滓があるが、神子が人型をとってくれた御蔭で圧迫感が無くなり、軽くなった。

「――……あー、楽になった。有難う、それからごめん」
「いいよ。良く考えていなかった俺も悪いし」

 ほっと息をついた時、神子が本題を切り出した。

「で、最初は何を占おうか?っていっても、やるのは面相・六壬勅盤なんだけどさ」
「占い?」
「おう、そうだよ。
 んーそうだなぁ……白蓮達がハッキリ見える人だから、色々サービスしとくよ?」

 何となく分かってきた。
 神子の傍らにいる妖狐が言っていた“客”とは、このことなのか。




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