灰色のアイツ

□第7刻
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「ていうか、妖風情が何でこの中で平然としてられんだよ」

 この結界内には、凄絶な神気が満ちている。
 神気は文字通り神の気だ。妖の類のものがその身に神気を浴びれば、ただでは済まない筈だ。
 だというのに、今目の前にいるこの妖は平然としている。

「うん?だってコレ、主のものだし」
「へー……………え?」

 竜平は納得しかけたが、意味が分からないため思わず聞き返した。

「お前の主って、神とか神仙の者な訳?」
「違うよー」
「じゃあ巫女とか、神主なのか?」
「それもハズレ。えっとねぇ……」

 軽く頭を傾けて考えるそぶりを見せる。それから、一呼吸置いてこう答えた。

「人間と神のハーフだよ」

 半分当たりじゃないか。思わず竜平は心中で突っ込んだ。



 人と神の合いの子がいるとは、本家にまだ居た頃聞いたことがあった。
 だがまさか、こんな身近にいるとは思ってもいなかった。しかも街のど真ん中に。
 そして、そんな存在を『主』と呼ぶこの妖は実は、守護妖と呼ばれる神に使える妖なのではないのだろうか。
 でなければ、神気の中で平気な顔をすることが出来ないはずだ。
 竜平は軽く眩暈をおこした。かなり厄介な者を追っかけてしまっていたようだ。しかも、神域に無断で入り込んでしまった。神罰が下ってもおかしくない、かもしれない。

「……はぁ」

 何故こんな事になったのだろうか。最初は別のものを追い掛けていたはずなのに。
 ていうか、何で途中から妖を追い掛けてしまったのだろうか。

「あれ、どうしたんだ?大丈夫か?」
「あ、いや、何でもない…………」

 ずっと無言のままの竜平は、それを見ていた妖に心配された。
 だがその気遣いが逆効果となり、仕舞いには頭を抱えて悶絶し始めた。
 こんな筈じゃなかったのに。
 その時、奥にある社の方から、新たな声が聞こえてきた。

「―――白蓮、何をしている」

 そちらを見れば、目の前の妖と瓜二つの妖が立っていた。






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