僕等の青春録

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「おま…ッ!女に…それも鞭使いっテ…!」


 すると悠くんが「こいつ、」とゲーム機を僕とソーカに向ける。
 覗き込んでそのキャラのグラフィックを見たら。
 巨乳で露出過多、ゴーグルをかけて鞭を持った、女王様!な女性が映っていた。


「タカシ美人だねぇ…。」
「つーかさァ、このキャラ隆に若干似てねェ?」
「隆本人じゃねぇのカ。」
「……俺が何だと?」

「「「あ。」」」


 悠くんが慌ててゲーム機を隠そうとしたけど、時既に遅し。
 突然伸びてきた隆の腕がそれを取り、隆は眼鏡の奥の切れ長の瞳でまじまじとそれを見る。
 あちゃー…。


「これ誰のだ、お前のか。」
「そのトーリ、悠くんのダ。」
「いや、冗談だから。ノリだから。タカちゃんとか勇者の名前だし……あの、隆?」


 悠くんは焦るといつもは緩い語尾が引き締まる。
 そして冗談の通じない隆は――怒ると誰よりも怖い。


「そうか……お前か…。」
「え、や、あのさァ、」
「…校則でゲーム機等の持ち込みが禁止されているのは知っているな。よって没収だ。」
「え…いや、まァ返してくれんなら…。」
「校則違反の人間にかける情があるとでも…?どうせお前のことだ、親の金を盗んだか中居さんから金を借りて秘密に購入したものだろう。じゃあ戻って来なくても…な?」


 あららー…久しぶりに見たな、隆の笑顔。
 普段が無表情だから怒った顔より怖い、迫力が凄まじい。


「ちょ、隆、俺のゲームめりめり言ってる。」
「問題無いだろ、これから屑になるんだから。」
「ぎゃあああ!マジごめん、いや寧ろごめんなさい!名前変えるから!なんならそれ俺の名前にして凌辱してくれても構わない!だからお願いします返して下さいィィ!」

「へぇ。」


 ニヤリと隆の笑みを見たら後ろに黒い影が見えた気がした。
 ……ほんっとサドだなぁ、隆ってば。
 普段大人しいくせにスイッチ入るとこれだもん。
 逆に、悠くんは弄りやすいしねぇ、ヘタレだし。


「まぁまぁ、隆もいい加減いくら悠くんが虐め甲斐があるからってやり過ぎじゃないかなぁ?」


 簡単な助け船を出してやる。
 まだまだ見てても楽しいんだけど、悠くん泣きそうだし。
 すると隆は、


「まぁ校則違反だから取り上げだが…放課後に返す。名前は絶対に変えろ。」


 取り上げる権限が隆にあるかと言えば一応生徒会長(笑)な訳だから、無いわけじゃあ無いのかなぁ。
 (笑)の意味は…まぁこの小さい小さい学校の生徒会なんて、ねえ。てか何仕事してんのか知らない。てか1年が会長って時点でお察し下さい!なんてね!
 とか思いつつ、去る隆から視線を動かし、再び牛乳を飲もうとした時だった。


「タカちゃぁん!大好きだぁぁあ!」
「うわ、ちょ、悠くん!?」


 ガバッと悠くんが僕に抱き着いてきた。
 ちょ、悠くん僕よりでかいクセに!重いんだけどぉ!


「悠くん、離れてよぉ!僕潰れる!」
「あ、悪ィ。」


 今の一瞬で落ち着いたのか、ケロリと笑顔。
 悠くんはいい加減人に抱き着く癖を直すべきだよねぇ、まったく!


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