短編

□ぼくのハートを奪ってよ
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「…覚えてませんか?」
「ごめん。そもそも山田さんとそんなに関わった記憶もない。」
「クラス委員を決めるとき、私は真っ先に手を挙げたらあのクソ真面目と一緒は嫌だと散々言われました。その時、手を挙げてくれたのが貴方です。」
「あーそんなことあったなー。」
「え、まあ成績も上がるし。リーダーとか頼られんのも好きだし挙手したんだけど。そんなに嬉しいこと?」
「私なんかに偏見持たずに接してくれるのが凄く凄く嬉しくて…。」

 余り他人、特に女に興味のない俺にとってそんな偏見は存在していない。自分がどうか、ただそれだけだ。
 この話から察すると断定は出来ないけど山田さんハブられてるってこと?うわ、実は俺面倒事に足突っ込んでたのかもしれないな。

「偏見も何も、真面目なのは山田さんの良いところだよ。…君にそんなことを言うやつは余程不真面目なんだろうね。俺は不真面目な子より真面目な子の方が好感を持てるな。」

 少し声を大きくして周りの数人の耳に届くようにする。これで変なやっかみが無くなると良いんだけど。
 俺はクラスで発言力があるから何とかなるのではと思う。ついでに好感と付け加えるだけでファンクラブとか謎の集団の人達が真面目になるかもしれない。平和だ…。

「普段軽い女とばっか遊んでるやつが良く言うよ。」
「黙ってろよ。それに遊んでない。」
「へいへい、ただのお財布ですもんねー。」
「否定は出来ないが態々言う必要無いだろ。」

「女を財布扱い…ですか…?」

「あ、やべ、」
「おい!山田さんいるのにそんな話するから!」

 多分凄く純粋な子だ。今まで俺にしつこく絡んできていたのは頭空っぽのちゃらんぽらんな女ばかりだったからさてどうしたものか。俺は自覚あるクズだけど、体裁良くいたい。
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