アナザー本編
□05
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「かわいいお嬢さんだね、描くかいがあるよ」
「えへへ、ありがとうございます!」
南池袋公園で、私と谷田部くんはおじいさんの前で座っている。
谷田部くんはさっきから周りを気にしている。
そういえば、先程から黄巾賊らしき人たちがこちらを見ている。
私が静兄の妹だってことを知っているからだろうか。
「ほらできた!」
「ありがとうございます!谷田部くん見て!」
「あ?あ、ああ。すげぇそっくりじゃん」
「でしょ!?おじいさん、ありがとうございました!」
私たちは立ち上がって公園を出た。
すると、谷田部くんの携帯がなった 。
どうやら友人から電話らしい。
私たちは解散することにして、別々にわかれた。
私は描いてもらった絵を胸に抱いて小走りで帰った。
私に、こんなに幸せな毎日があって良いのだろうか。
そんな事を考えながら、家路を急いだ。
――――――――――――――――
「どうした?」
電話の相手はさっき公園にいた奴らだった。
俺は携帯を耳に当てながら歩く。
「谷田部さ、さっきの女と仲良いわけ?」
「あ?ああ…まぁな、最近知り合ったんだ」
「………谷田部、お前わかってんのか?」
「……?なにがだよ」
「あの女、敵である平和島静雄の妹だぞ?」
俺の足はピタリと歩くのを止めた。
平和島静雄の妹……?
「あ、あいつが?」
「ああ、妹だ」
俺の中で、さっきまで見ていた響の笑顔が、音もなく崩れ落ちた。
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