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□かりそめの
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塔の中にいると麻痺してしまう。
この世界は血と暴力で溢れかえっている事を、忘れてしまう。



『かりそめの』



「おい」

地をえぐるような低い声が、昼の街角の空気を一変させた。
歩道を歩いていたアリスは、寒気にも似た感覚に全身を支配され、思わず身体を硬直させる。
久しぶりに直で感じる、混ざり気の少ない純粋な『殺意』。
放っているのは、今まで彼女の隣を談笑しながら歩いていた筈のグレイ=リングマークだった。


 
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