秘密請負人
□―喪失と焦燥―
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暗闇を纏った人物は、息を潜めて機会を窺っていた。
いつの間にか"あの人"の隣を占領していた者へ向けた憎悪か。
それとも"あの人"への歪んだ愛情の果ての行為なのか。
どちらにせよ、訪れた機会に鼓動が高まらないはずはない。
上質な黒の上に乗った桃色の文字を細い指でなぞると、笑みをこぼした。
どこか危うさを孕んだその笑みは、誰の目にも留まることなく、ただ、どこまでも堕ちていく。
手紙の宛名に唇を軽く押し付け、声高らかに、神聖な遊びの始まりを宣言した。
「ゲームスタート」
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