捧げ物・頂き物

□君の瞬き
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これは、プライドをかけた勝負だ。


絶対に負けてやるものかと、赤い箱を睨みつけた。






『君の瞬き』



****


早坂香(はやさかこう)は、放課後いつものように化学準備室へやってきて、いつものように本の整理をはじめる。


いつもどおりではなかったのは、香の心境。


――最近の女子高生って…。


どこかのおばさんのようなことを考えてつつも手は止めないのが、どれだけ慣れているかの表れだ。


「はぁぁぁ」

無意識にため息を吐けば、教師――日高柚介(ひだかゆうすけ)に怪訝な顔を向けられる。


「なんですか、そのため息は。」

「……いえ。なんでもないです。」


柚介はにこりと笑って、

「仕事が大変だとか文句を受けつける気はありませんよ。」

楽しそうに言う。



くそぅ。性悪め。



「違いますよ。……最近の女子高生ってすごいなぁと感心していたところです。」

「あなた何歳ですか」

「17ですよ!…別にいいじゃないですか!カルチャーショックですよっ」

「一体なんの話です?」



う、と香は言葉に詰まってしまい、この教師に話してもいいものかどうかと考えた。

悩んでいると柚介に睨まれてしまったので、両手を挙げて降参する。

「……恋愛についてです。」

「具体的に」

「…………」

「…………」

「……。」

「…早坂さん、減給です。」



そう言われて呆気なく白状したのは柚介の背後に黒い影が見えたからである。

危険極まりない。




「…つまり自分の経験の無さに吃驚していたと。」

「まぁ…そんなかんじ」


それは授業がすべて終わったあとのこと。

掃除当番だった香はクラスメートと教室を綺麗にしていたのだが、誰が始めたのかいつの間にか恋愛の話になっていた。

その内容がキスがどうのとか、その先の…ごにょごにょ…といった事まで事細かに喋るものだから、香は呆気にとられてしまったのだ。

――みんな経験あるのか、と。


「まさかキスすら未経験ですか?」

馬鹿にしたように尋ねる柚介。

「…………ある」

むっとしながら答えると、何故か教師は眉を寄せた。


「疑ってます!?」

「………ええ。正直なところ。」

施設にいたころ、年上のお兄さんにふざけてされたなんて口が裂けても言えない。
それも小学生のころの話だなんて死んでも言えない。


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