捧げ物・頂き物

□願うこと。
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「最近トリップしてくる人が多いんです」
雪合戦を終え、ユリスが笑みを零しながら説明する。
暖かな部屋の中で、タオルを首から掛けながらみんな話を聞いている。
アギは今にも寝そうだ。
「まあ、確かに格好が格好だし」
「敷地内にいたのも変ですよねぇ」
「その通りです」
ディルカとアギの意見を聞き、ユリスは頷く。
そして目線を変えた。


「お2人方はどちらから?」


雪合戦終了後に俺が見た人物は、1人は男でもう1人は女。
男はユリスのように笑みを絶やさず、物珍しそうに俺達を見回す。
女は顔を引き攣らせながら目線を一点に集中していた。


どう見ても異世界人…か、"例"のスパイかどちらか。


王子が女の胸ポッケからぶら下がるストラップを指差した。
「うさぎのストラップだねっ。
だけど、不思議な柄だね」
ユリスが説明する。
「"桜"という花の種類です」
女は口をぽかんと開けている。
「この様子からすると…スパイとかでは無いと思うが」
「確かに、状況判断に欠けているよなぁ…」
俺の言葉にディルカが同意する。
「では…お名前は何とおっしゃるのでしょうか?」
男と女は互いの顔を見合わせた。
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