捧げ物・頂き物

□wish
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広がる綺麗な洋式の庭園。

ありえない、
としか言いようがなかった。


今日は元日。
早坂香(はやさかこう)は初詣に来たのだが、変態教師こと日高柚介(ひだかゆうすけ)と、偶然会ってしまった。


それだけならまだ良かった。










これは30分ほど前のこと。


「なんで先生、こんなとこに」
「なんで…とは、何故です?今日は元日なんですから、初詣に来るのは普通じゃないですか。」


いや、あんたが神様にお祈りする姿が思い浮かばないんだけど、
という突っ込みは喉に留めておく。



日高柚介は香の通う燈華学園の化学教師だ。

しかし、彼は同時には"秘密請負人"でもある。

人の秘密に関わるトラブルを専門に解決する職業だ。
勿論、本職は高校教師なのでそれは副業…というより趣味だったりもする。

香はとある事情により柚介のもとでバイトをしているのだ。




「もうお参りはすませたんですか?」

柚介は高そうなロングコートを身に纏い、ディープレッドのマフラーを口元を隠すように首に巻いていた。

くそ、本当に容姿だけはいいな、コイツ。


「おかげさまで、まだ済んでませんよ。」

ちょっと睨みつけるように見上げれば、柚介はそっけなく背中を向けて、

「じゃあ、一緒に行きましょうか。早坂さん、若いくせに友達と来たようでもないですし、僕もまだ済んでないので、一緒に行ってあげますよ。」

と、横顔で皮肉げな笑みを浮かべた。


「亜矢が風邪引いちゃって、一人で来るしかなかっただけですよっ」

決して友達が少ないとかではありません、と一応釘をさしておく。




やはり、今日は人が多く、並んでお参りの順番を待つ二人。

やっと順番がきて、用意していた百円玉をお賽銭箱に投げ入れた。

しかし、隣の人物は千円札を一枚入れやがった。


――今年はこの変態教師のパシりにされる回数が減りますように!


香は、ふう、と一息ついて、柚介を見れば、ちょうど柚介も終わったらしく顔をあげた。


神社からでて、少し歩いたところで、香は気になったことを聞いてみることにする。

「先生、千円札なんて入れて…なにお願いしたんですか」

柚介はニヤリと笑う。

「もちろん、去年よりも多くの秘密と巡り会えますように、とお願いしましたよ?」


げげ


香は激しくげんなりした。









香が顔を上げた瞬間だった。




目の前の景色が
ぐにゃりと歪んだのは。


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