秘密請負人
□その理由は
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『その理由は』
放課後の化学準備室。
窓からは夕焼け空が見えている。
しかし香は部活がないにもかかわらず、まだ帰れはしない。
窓の前にあるデスクには、ニンニクと十字架、それから聖書に、破魔矢、御守り、経典、線香などがずらりと並んでいた。
……なんでこんなことに。
機嫌が良さそうに鼻歌まじりの柚介。
「これはどうです?」
御守りを手に取り、香に近づける。
「いえ、特に何も感じませんが…。」
柚介の変態っぷりに、かなり引き気味の香は、どんよりとした雰囲気をバックに漂わせていた。
香が柚介のもとでバイトをはじめてから、そんなに日は経っていない。
夏休み明けからのスタートだったからだ。
しかし、柚介は今のところ、香に特には仕事も与えず、自身の興味関心を惹きつける香の秘密を存分に楽しんでいたのだった。
この、吸血鬼や妖怪などに効き目がありそうなグッズの山は、柚介が集めてきたらしい。
さっきから、一つずつ香に近づけては、香の反応を見ている。ただ、それの繰り返し。
「ひ、日高先生…バイトの仕事がないなら、帰らせてはもらえませんか?」
すこし驚く変態教師。
「これもバイトの一環だと思ってもらって結構ですよ。…それとも、もしかしてアレですか、雇い主に逆らう気ですか?」
香はぶんぶんと顔を横に振る。
この数日の間で、この教師の趣味は、人の秘密を集めるという、なかば犯罪になりそうなことだとわかった。それが転じて副業になっていることも。
そして何より、性格が悪い、ということを知った。
……普段の、あの爽やかさは何よ!?
とりあえず、驚きと恐怖の連続の数日間。
「これは?」
破魔矢を近づける柚介。
「特に何も…(焦」
うーん、と考える素振りをする柚介。
あくまで素振りだけなのだ。
きっと考えてはいない。
「あの、なんでこんな事を…」
「ん?…やはり理科を専門にする者として、素直に興味をそそられますからね。
……投薬とかしちゃいます?」
ひぃぃぃ!(°□°;)
「それはご勘弁を!!!!!!泣」
そぉ?と残念がる変態。
何なんだこの変態は。
あの顔で……詐欺だろう、あきらかに。
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