■呪いの王子■

□Chapter 7
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「…起きねぇな」
ショウは、木に身体を預けて寝ているサニアンを見た。無表情で、全くお行儀の良い事にぴくりとも動く気配がない。このままただ道に転がしておけば、きっと死体だと思われるだろう。
「どうしたもんかな」
トゥレイシーは先程、食べ物を探しに行ったばかりだ。なのでショウは一人、見張りに暇つぶしも兼ねて眠るサニアンの顔をいじっていた。
彼の柔らかいほっぺたをつねってみる。動かない。
「まあ、静かでいいか」
ついでにサニアンの顔をまじまじと見た。少し癖のある、燃えるように赤い髪。勿論まつげも赤い。
なんとなく、ショウはサニアンの髪と自分の髪とを比べてみた。最近まで黒かった自慢の髪は、今は茶色に染め上げられている。重なると、二色の髪はまるで燃える木と炎を表しているようだった。
綺麗だな。ショウは呟いて、サニアンの赤い髪に手を伸ばした。薄闇の空に映える、炎の色。軽く持ち上げると、それはするりとショウの指の間をすり抜けて、何の抵抗もなく元の位置へと戻っていった。
もし、俺の髪が赤くなる事があったら。それは今まで手にかけてきた、人間の血の色なんだろう。
こんなに綺麗な、自然の色ではない。
ショウはふと思った。そしてその中には、きっとソードも含まれている。
トゥレイシーじゃない。彼は俺が、殺したんだ。
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