■呪いの王子■

□プロローグ
1ページ/3ページ

【現在】より、およそ20年前。
緑濃い樹海深く分け入る先に、その古城は建っていた。
蔦が幾重にも絡み付く塀、また門構えも決して戦に向いているとはいえない貧相なものだが、この白い城の周りには、常に充分な平和があった。
その下に住む幾千の人々は、城に住む一人の女王に感謝し毎日を過ごしている。


そして。
その城で、今まさに一つの新たな命が芽吹こうとしていた。



小さな顔をくしゃくしゃにして泣きわめく赤ん坊を抱いた大柄な女性が、声を震わせて傍らに横たわる美女に話しかけた。
「女王…王子が、王子が誕生なされましたよ」
「あぁ…抱かせてメイア」
「はい」
女王と呼ばれた白髪の美女は、瞳を潤ませて我が子の顔を覗き込んだ。生まれたばかりの王子はその腕の中にすっぽりと収まり、一生懸命に泣き声をあげている。
メイアはそんな彼女を嬉しそうに見つめていたが、やがて表情を引き締めて再び口を開いた。
「私は、大臣様、ルード様に王子の御誕生をお知らせ致してまいります。女王…いえ、ユマ様はどうぞゆっくりとお休みくださいませ。あれにいる女官がお二人をお世話させて頂きます」
「有難う。お願いするわね、メイア」
「はい」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ