03/29の日記

16:35
東妄想。
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斐美様のこと。

あのリアタイにあげたやつ。



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東の均衡は徐々に崩れてきている、それは明確にわかる頃合へと時は進み始めていた。

団結力ともに劣ることはなかった、だがとある一件でそれは見事に崩れ去る。







「どういう要件なんだ…。」




彌生ら戦士の目の前には今にしては珍しい着物姿の男が居た。
髪は長く、顔、腕、首、体全てに巻かれた包帯が異彩を放っている。
解放された目と口から見える肌は異常に白かった。





「…やはり……幾年経っても"相模"は東から嫌われるようですね。」




男は物静かにそう呟く。
彌生の眉間による皺が増えた。




「斐子は元気にやっていますか。」

「…斐子先生のことか。」

「ええ。一応、私の弟なのでね…義妹の柚子も、…元気で居ればそれでいいのですが。」



男の瞳に光はなかった。彌生たちを捉えるもそれは定かではない。

この男は相模斐美。
相模斐子、今の東審査員兼美術教師であり佐和山柚子の婚約者の兄だ。
斐子に兄弟が居るということを初めて知った彌生たちは最初から動揺を隠せないで居た。




「…まあ簡単に話を進めれば、今東の審査員の総権力は教頭にあると聞きました。」

「ああ。それは皆了承している。任せられる審査員が少なくなった分教頭に頼むほかなかった。」

「……そこでなんです、がね。」



斐美は瞳をそっと閉じた。




「東の審査員の総権力を我が相模家へ譲渡、していただきたいと思いましてね。」




一瞬、いやそれ以上その場の空気が凍りついた。



「な、んだと……」

「教頭も大変でしょう。…という言い訳はありませんが今、東に絶対的権利を持っているのは我が義妹です。リーダーは彌生さん…貴方であってもね。力量、世の中全てそうなのです。」

「それに相模家と何の関係があるんだ…」

「謂わば相模と佐和山は親戚同士。権利は此方にも傾いてくる、という話です。」

「ふざけたことを…!お前ら相模家は東高校を火の海に追いやり、青の戦士を殺し、赤の戦士の親族を根絶やしにした…!その恨みを俺だって、柚子だって忘れたことはないはずだ…他の戦士だって、…絶対に忘れない。それほどまでに相模という存在は東に多大な影響を与えてきたんだよ…」

「…屁理屈を申しますが、…その赤の戦士"早坂ゆかり"に我が相模家頭首だった相模彦一は殺されました。それも、三度までも。一度目は戦士となれず足蹴にされ、二度目は"東の変"にて片腕を切り落とされ失脚、三度目は最終決戦と言ったかのように青の戦士を除くほかの戦士での相模邸への押し入り…そして相模彦一の抹殺……私たちがしてきたように、貴方たちも同じ事をしてきているんですよ。」

「………ッ!」


その言葉が、彌生のみならず他の戦士の心に突き刺さる。
だが、その場に柚子、美都、李己の姿はない。



「…別に私は他の相模家の者のように彦一を崇拝しているわけではありません。怨んでいるわけでもありません。私はただ、相模の実権を取り戻したいだけ……ああ、申し遅れましたね。私は現在の相模家の総取締役を担っているんですよ。」

「な、…確か相模家の実権は斐子先生の母親に当たる人だって聞いたはずだが…」

「…あんな女、いずれ失脚させますよ。まあ…このことはあまり首を突っ込まないでいただきたい。……なので審査員の総権力をこちらへ譲渡していただきたいのです。教頭にはもう申し出を致しました。今頃、義妹や美都、李己らが交渉しているでしょう。一番手ごわいであろうと思った貴方方は私が当たりました。」

「何度言われても断る。相模に東を渡すなんて絶対できない。」

「…申し訳ござませんね。私は目が見えないんです。両目とも。なので今貴方たちがどのような心情で居るかはわかりかねます。…ですがこれだけはわかりますよ。」



斐美の閉じられていた瞳が開いた。
光のないそれは先ほどまでとは打って変わって一点に彌生を捉えた。





「私を殺したいでしょう、とても。」





一瞬ばかり、その瞳に悪寒を覚えた。





「まあそうでしょうねえ、…東審査員の権利を総て我が相模家へ委ねろ、なんて東を首晒しにするも同じこと…ふふ、安心してください。背後には恐らく佐古井綾瀬率いる佐和山家台頭もつくことでしょう。と、なれば相模も下手には動けない…斐子もいますからね。ですがそれでも…この要件を貴方方が拒むのであれば容赦は致しません。……何しろ私は少々豪胆、ですので…ね。…言ったでしょう、世の中全て力量である、と…」




彌生は目を疑った。
そこには斐美の背後で柚子の使う"彼岸手"らしきものが暗躍している姿を。





終了。



多分続く。

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