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□溺れるそのまえ
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昨日、入れたばかりのプール
少し塩素臭い。




「お前何やってんの」

『遊泳』

「今日休みだぞ」

『知ってるよ』

「どうやって忍び込みやがった」

『それはこっちの台詞だね。ちゃっかり修兵だって忍び込んでんじゃん』

「お前を見つけたから来たんだよ」

『こなくてもいいのに』

「溺れさせようと思ってな」

『帰れ』


冗談が通じねえな。


「朝からプールかよ、それも服着たまま」

『案外気持ちいいよ』

「そーかよ」

『入る?』

「やめとく」

『気持ちいいのに』


「透けてる」

『Tシャツですもん』

「あがってこい」

『やーだよ。絶対変な事すんじゃん』

「エロイ格好してる女を見てみぬフリできねえだろ」

『やな男』



「あがれ、帰るぞ」

『んー・・』

「聞いてんのか」

『んー・・』

「おい」

『待ってー・・もうちょい』

「待ってじゃない。俺は帰りてえんだよ」

『一人で帰ればいいじゃない』

「俺は景莉と帰りてぇの」

『じゃあ、もうちょい待ってよ』



「お前、いい加減に帰ろうぜ」

『なんで?なんか用事あるの?』

「ねえよ」

『んじゃいいじゃない』

「駄目」

『どうして?』

「お前そこにいると消えそうだから」


『・・・不安?』

「瞬きすらできねえよ」

『ははっ、バカだね』

「バカじゃねえよ」


景莉は高笑いしていた


「・・・・くそっ」


俺は無償にイライラしてプールに飛び込んだ


『わぁ!?』

「帰るぞ」

『あははははっ!!!』

「んだよ」

『バカだ!絶対修兵はバカだよ!』

「てめえ・・。」

『よっぽどあたしのこと好きなんだね』

「うるせーよ。ほら」

『ん?』

「手、握れ。離すなよ」

『過保護すぎだよ。あたし消えないって』

「いいんだよ。俺が安心できれば」

『幸せすぎてつぶれそう』

「御託いってねえーで帰るぞ」

『はあーい』





愛に溺れるまえに

(プールに溺れる前に俺にでも溺れてろ)
(バカを通り越したね)
(うるせーよ)









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