short

□君がすき
1ページ/1ページ


「ルフィ、ねずみは明日でいいからはやく布団は入れよー」

ルフィはねずみを追いかけ回していた

「…ルフィ!お前いいかげん…!」

エースがルフィに一発食らわそうとしたときだった
ごちん、さっきまではしゃぎまわっていた足音が急に止むその代わりに鈍い音が弟の叫び声とともに聞こえた、どうやら顔面からずっこけたうえに棚の角に額をぶつけたらしい

「いってぇ!っなんだこの赤いの…」

それが血だと気付くと顔をくしゃくしゃにし弟のまるい大きな目からポロポロと涙が溢れ出した

「ったくそんくらいで泣くな!」

そんなことにもかまわずエースがルフィに怒鳴る
「っないてっ、ねえっし!いたくもねえ!」

しゃくりあげながらルフィは一生懸命鼻をすすっていた

「エース、怒鳴ることないだろ、ルフィこっちおいで」
おれが手招きする
ふらふらとおぼつかない足取りでおれのもとにくる

「さぼぉ…ほんとはな…いてえんだ」

おれの膝の上に座って抱きつきながらエースに聞こえないよう、小さな声でおれに分かり切っていることを打ち明ける

「はいはい、大丈夫だから、ルフィ、顔あげろよ血拭いて手当てしてやるからさ」

ルフィが顔をあげると額の傷は思ったよりも深くはなかった、そのかわり血がだらだら垂れてルフィの目にはいりこんでいた、もしかしたらおれたちが盃を交わす前におれたちを庇って傷だらけになった時のトラウマかもしれない、

「…ごめんな、ルフィ

「なんでサボが謝まるんだ?」


「…、エースもおれもほんとはルフィに謝らなくちゃならないことがあるんだよ、なあエース」

「…昔のことだろ、…サボ、絆創膏あったぞ」

なんだかんだ言ってエースも心配しているらしいなんだか笑えてきた
「別に前のことだしなんのことか分かんねえけどそんくらい怒ってねえよ」

さっきまで泣いていたのが嘘のようにルフィが笑う

「…ありがとな、ルフィ」


「それよりな、サボ耳かせよ!」

ルフィが耳元で話す
エースはそれが気に入らないらしく不機嫌そうに見ていた

「ははっ!なんだそれ?でもいいかもな、」

「だろ!」

「…っち!おもしろくねえ、おれたち兄弟だろ!」

こういう時だけ兄弟を使うとルフィをおれなら引き離して自分の布団に連れ込んだそんでもって
ルフィをぎゅうぎゅうに抱き締めた、さっきまでルフィに怒鳴り散らしていたのは誰だったっけ?

「あー!だめだぞエース今日はサボと寝るんだ!」

そういってルフィはエースの腕からするりと抜け出すとおれの布団に転がり込んだ

「…あぁ!もう勝手にしろよもう兄ちゃん寝るからな!」

そう言ってエースがランプの明かりを消した

「おれたちも寝るなおやすみエース」

しばらくしてエースが寝返りをうったのか布団のこすれる音がする

「…ルフィ、ごめんな」
「ぶはっ!なんでルフィが寝てからいうんだよ!」


「サボ起きてたのかよ!」

「おれも起きてるぞ!
サボ作戦成功だな」
「…だからルフィが珍しくサボと二人で寝るっつったのか…!」

「まぁ、それもあるけどルフィがおもら…」

「あー!それ言ったらダメだぞサボ!」

「サボがなんだって?ルフィ」

「っ!もう寝るぞおやすみ」

「ははっ!おやすみルフィ」

「まあ、明日になればわかることだしな楽しみにしとくなルフィ、」

そしてまたおれたちは
瞼をつむる、今日のこと明日のこと冒険のこと
そして世話のかかる
愛らしい弟のこと
すこししてからかすかにルフィの声が闇に吸い込まれていった

「えーす、さぼ大好きだ」

それは寝言なのかわからなかったけど胸が暖かかった、きっとエースもにやけてるに違いない
外の月が半分だけ笑っていた


(きみがすき、)
(きっと世界は僕ら中心に回ってるその僕らの中心はもちろん君)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ