短編

□不器用な貴方
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 「分かった」







携帯に受信したメールを見て、私はハァ・・・とため息をついた。







送信主は私の彼氏。今をときめく人気声優の吉野裕行さん。




数分前、共演者の方たちと飲みに行くという旨のメールを送ったところ、何とも
味気のない返信が来た。








「何か、なぁ・・・」







彼の性格上、長文や絵文字などが送られてくるなんてことは最初から期待はしていない。(してきたら逆に怖いくらい)









付き合い当時からこんな状態で・・・、でもその時はたった一文でも言葉に表せない位の愛情を感じていたのに・・・。









「吉野さん・・・。私のこと好きなのかなぁ・・・」








最近の私の口癖。呟いてからいつも「面倒な女だなぁ」って自嘲する。








吉野さんはこういう束縛は嫌いだって分かっているのにつぶやかずにはいられない。






2人で過ごしたのは一体いつだっけ・・・。






そんなことすら思い出せないくらい、二人で過ごしたのは遥か昔になってしまった。







勿論、同業者として現場ではしょっちゅう会う。現に共演したのは3日前・・・。








しかし、私たちは吉野さんたっての希望で周囲には私たちの関係は
話していないので言葉を交わすこともなく・・・。




アニメのアフレコ以外だと1ヶ月は悠に話していない。





私の大好きなあの笑顔もずっと見ることができない。







普通の子だったらすぐに電話して「逢いたい」とか「さみしい」なんて
可愛く甘えることができるのだろうけど、私にはそういう女の子みたいなことが恥ずかしくてできない・・。







なにより、そんなわがまま言ったら絶対に吉野さんに嫌われるって
確信めいたものがあったから・・・。










そこまで考えて、私はフルフルと頭を振り、パタンと携帯を閉じて飲み会が開かれるお店へ歩を進めた。










(吉野さん・・・わたし達どうなるの?)








そんな不安な思いを胸に残したまま・・・。












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