短編
□情欲の視線
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「はぁ・・・」
新人声優の友希奈は、仕事に身が入らなかった。
今までは仕事に熱心で、常に上へ上へと目指してきた。
しかし、最近はため息ばかり。仕事でもミスが多くなっている。
その理由は・・・
(神谷さん…)
2週間前、ずっと憧れていた神谷浩史にいきなりキスをされた。しかも、かなり激しく…。
時間に余裕があれば貞操の危機ですらあった。
初めての経験に戸惑い、恐怖し…そして感じてしまった。
どうする事も出来ず、与えられた快楽に身を任せてしまいそうになったが・・・
神「ただし、お前から誘うまで俺は一切手は出さない。
まぁ、抱かれたかったらお前から誘惑してこい。」
告白した訳でもされた訳でもなく。
しかし普通は恋人同士がする濃厚なキスをされ、抱かれる寸前まで行為をされた。
神谷の気持ちが分からない。
私は好きだ。それに気づいているのだろうか…。
気付いていながら、あんなに意地悪なことを言ったのか。
「神谷さんを、誘う…?ムリムリムリムリ!!///」
想像しただけで頭が沸騰してしまいそうだ。
全く経験がない私には…。
「気まずいなぁ…。でも、現場で一緒になることないし・・」
大人気声優の神谷さんと、新人の私。
滅多に現場が重なることはない。
幸いなのかなんなのか・・・
「もう…どうすればいいのよ…」
現場
「おはようございます…」
鳥「あ、中野さんおはよ」
遊「おはよう」
櫻「あ、君が中野さんかぁ!初めまして!櫻井孝宏でっす」
「・・っ!!は、初めまして…」
今日から始まった新たな現場。
遊佐さんと鳥海さんとは何度か共演して若干慣れてきたけど…
やっぱり、男性は苦手だ
櫻「はぁ…可愛いね♪」
「・・・っ、え・・?」
いきなりの発言。
遊「こらこら、櫻井君(苦笑)その子にはもう決まった人がいるから
だめだよ」
櫻「えっ!?そうなの!?」
「っ…!!/////」
真っ赤になる私を遊佐さんがニヤニヤとみつめてくる。
「そ、そんな人いません…っ!!」
鳥「あれ〜??」
鳥海さんまでもがニヤニヤと便乗してくる
「な、んですか…」
遊「ま、憧れってことにしとくよ」
鳥「でも、あの人かなり人気だから…
後悔だけはしないようにね?」
「・・・っ!!」
櫻「え、ちょ、二人とも知ってるんすか!?
教えて下さいよー!」
遊「さぁて、収録収録♪」
鳥「はーい、みんな準備してー♪」
ハイテンションなおじさん2人はブースへ入って行った
櫻「もー、なんなのさー!」
櫻井も続いて入っていく
「後悔・・・」
私は鳥海さんに言われた言葉を噛みしめていた。
十分わかってる。神谷さんが、業界の女性たちからも大変な人気があると。
でも、だからこそ。
憧れだけだった。憧れでいようとした。
好きになったら、苦しいだけだって分かっていたから。
なのに
神谷さんが、あんなこと…キスなんかしたから
私の気持ちは、憧れなんかで誤魔化せなくなっている。
心から好きが溢れてくる
苦しいよ…。