短編

□プレゼント
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ロビー


安(もうそろそろ来るかな…)


スタジオの入口の前で、俺はある人物を待っていた。


会えるのは何日ぶりだろうか




ガチャ


「あ、おはようございます」


安「お、おはよう。

ひさしぶり、だな…」


「あ、そうですね…お久しぶりです。」


何とも気だるそうに話すのは、俺の彼女の中野友希奈。


俺が待っていた人物だ。



安「今日からしばらく一緒の現場だな。
ヨロシク」


俺は笑いかけるが、友希奈の表情は崩れない。


「あ、はい…じゃあ。」


そう言うと、友希奈は俺の横を通り過ぎてスタジオへ入って行った。




安「・・・、ハァ…」


肩を落とし、ため息をつく。



安(何か、会うたびに態度が冷たくなってってるんだが・・・。)


安「何なんだよ…」







俺がスタジオに入ると、友希奈はいなかった。



安「(あれ…)おはよーございます」


鳥「安元君おはよー。しばらくよろしくね」


中「どーも」


遊「やあ、久しぶり。」



俺が椅子に座ると、




遊「で、どうだったの?中野さん。」



すかさず遊佐さんが話しかけてきた。



安「はぁー…ダメっすね(苦笑)前より冷たくなってました。」


鳥「え、前見たときかなりクールだったけど…
あれより更に冷たいんだ(笑)そりゃ大変だねぇ」


鳥海さんがポンポン、と俺を慰める。



中「最近いつデートしたんすか?」



中村に聞かれて、すぐには答えが出てこなかった。



安「え〜っと、二か月くらい前、かな・・・?」



俺の答えに、みんなは仰天してた。



遊「二か月って…それ、付き合ってるって言うの?」


安「「はぁ…まぁ俺が忙しかったって言うのもありますけど、

友希奈を誘っても、いつも断られるんですよね…。
仕事とか、先約とか、家の用事とか。」


鳥「えー…でも、二か月間、一日も無理なんて・・・

何か、…安元君の前で言うのもアレだけど、さ。



怪しくない…?」



鳥海さんの一言が、グサッときた。



俺も…心の隅でそう思ってたからだ。



遊「うーん。まぁ、今日から数ヶ月間同じ現場なんだしさ。

距離も絶対縮まるよ。」




安「だといいんですけど…。」




そんな話をしていると



阿「おはよーございまーす」


田「よろしくお願いします」


日「お願いします!」




今日の共演者、阿住、田村、日高の三人が入ってきた。




鳥「おはよー。よろしくね」



この三人とは、俺も良く話す。

けど、今の俺は友希奈の事で頭がいっぱいで
話しかけはしなかった。




日「安元さん…?何か元気なくないですか?」



いきなり耳元で声がして、驚いて隣を見ると

日高ちゃんが心配そうに俺の隣に座っていた。




安「いやいや、ぜんっぜん平気!ちょーっと疲れてるだけだから。」



日「そう、ですか…?体調気をつけてくださいね?」



安「うん、ありがと。」




収録までまだ時間があるから、女性陣はロビーへ行った。



鳥「相変わらず好意むき出しだねー日高ちゃん。」

ニヤニヤしながら鳥さんが俺の隣へ来た。


安「何のことですか」


鳥「ははっ、まぁ、うん。日高ちゃんだけじゃなくてさ。

安元君はかなりモテるよね。」


遊「料理はできる、いい声、優しい、背高い、
面倒見が良い、彼女なし。

本気で狙ってる子、かなり多いよ」


遊佐さんも加勢してくる。



安「俺は彼女いますから」



中「まぁでも、中野さんとそういう会話してるとこ見たこと無いからさ、

全員安元君は彼女いないって思ってるよ。

何で言わないの?」




安「何でって・・・別にわざわざ言うこともないでしょ。


俺から話しかけても、向こうは仕事モード崩さないし。

何より、関係を隠そうって希望したのは友希奈だから。」



鳥「…聞けば聞くほど安元君の一方通行だね。」



安「数か月前までは、向こうの方が俺にべったりだったんすよ!?


甘えてきて、可愛くて可愛くて…。


なのに…。


何で…。」





落ち込んでいく俺を見て、周りはもうあきれ顔。









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