funny!!

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今日は始業式なので学校自体は午前中で終わりらしい。けれど、もう今日から練習が始まっている部もあり、テニス部はその筆頭だという。そうなると私達も必然的に参加しなくてはならない。入学初日だというのに忙しい話だ。
再び碧ちゃん達と合流し、榊さんのいる音楽室に向かう。意外なことに、榊さんは音楽の先生だ。




「失礼しまーす!」




ノックも無しにりりかが勢いよくドアを開ける。碧ちゃんがりりかの頭を軽く小突く。しかし、当の榊さんは特に気にした様子も無く、来たか、とこちらに歩いてきた。




「よし、では行こう」

「オッケー太郎!レッツゴー!」

「学校では先生と呼びなさい」

「そこかよ」




若干あやしく聞こえる会話をしながら廊下を進む。
この数日間でだいぶ榊さんとは打ち解けた気がする。知っての通り榊さんはとても良い人なんだけど、話してみると思いの外話しやすいというか、かなり変わってる人だと思う。さっきみたいに目の付け所がちょっとずれてるみたいな。




「ほう。お前達の世界ではそんなものが流行っているのか」

「そうだよー。『れりご〜♪』ってしょっちゅう流れてた」

「ふむ…『れりご〜♪』か…。こちらの世界でもそんな歌が流行っているな」

「そうなの?」

「たしか…『フナと海の帝王』とかいうアニメ映画の主題歌だと言っていた」

「何それどういう映画!?」

「つーか、フナって海に住んでなくね?」

「そもそも、どの層に向けて作られた映画なのかしら」

「略して『フナ海』…?」




思わず四人でツッコんでしまった。これも榊さんと話して気づいたんだけど、私達がもともといた世界とは流行っているものが若干違っていたり、だいぶ前に流行ったものが今流行っていたりするみたいだ。…『フナ海』は若干レベルの違いでは無さそうだけど。




「そういえば、お前達が言っていた廃墟だが、やはり見つからなかったぞ」

「そうですか…」




碧ちゃんが残念そうな顔で俯く。
この世界に来た次の日、もう一度あの廃墟に行ってみようという話になり、行ってみたら廃墟自体が見つからなかった。榊さん曰く、あの辺りに廃墟など無かったということなので調べてもらっていたんだけど…。たしかに、あの高級住宅街に廃墟があるのは変だと思う。




「そう気を落とすな。私も色々調べている。お前達はまずこの生活に慣れることを考えればいい」

「…そうね、とりあえずこのリッチな生活を満喫するのも悪くないわ」

「何でそんなに偉そうなんだよ」

「あっ、ねーねー!あれテニスコート?」

「ああ。そうだ」

「わー!すごっ!でかっ!」

「あっ、おいりりか!」




碧ちゃんの制止も聞かずにりりかが走り出す。ガシャン!と派手な音を立ててフェンスにしがみついたりりかはしきりにすげー!と喚いている。先に来て練習をしていた部員の目が一気にこちらに集まる。もう、全く。
ごるぁりりかー‼と碧ちゃんが助走をつけて飛び蹴りをお見舞いする。りりかの絶叫が辺りに響き渡り、更に通行人からの視線が集まる。ここまで追い付くのが嫌な状況も中々ない。




「お前は一日に何回怒られたら気が済むんだ?えぇ?」

「ご、ごめんって碧ちぃん…でも飛び蹴りは酷いよ〜」

「はあ?」

「ぎゃあああああごめんなさいいいいいいたたたたた‼」




りりかのほっぺをぐにぐにと碧ちゃんが伸ばす。かなり痛そうだ。そこに美緒ちゃんがりりかの脇をくすぐり追い討ちをかける。りりかが最早人語では無い声で笑いモザイク処理が要りそうな顔で悶えている。ヤバい写真撮りたい。
私が笑うのを必死に耐えている横で榊さんが茫然としていた部員達にてきぱきと指示を出していく。榊さんスルースキル高いよ…




「ん?あれ?鈴代さん?」

「え?」




声をかけられ振り返るとおしたり君が立っていた。その隣では赤髪のおかっぱ頭の男の子が至極不思議そうな顔でこちらを見ている。
突然の登場に私が固まっていると、今まで騒いでいた三人もピタッと静まり、声を揃えてこう言い放った。




「「「あ、食○倒れ人形」」」




神様、耐えきれず吹き出した私を許してください。





03.転校初日
(早くも波乱の予感)




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