funny!!
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歩くこと数分。
りりかに連れられてきた場所はいかにもな雰囲気の漂う廃墟だった。
…廃墟?
「え、ここ、入って大丈夫なの…?」
「だいじょぶだいじょぶ!『立ち入り禁止』って書いてないっしょ?」
「あ、なるほど」
「いや、納得すんなよ」
雛希が言いくるめられそうになっていた。
いやいや、入っちゃダメだろ。どう見ても。
「ここって確か…うちの学校でよく聞く…」
「そう!お化けがよく出るって噂のボっロい建物だよ!」
「へぇ…本当にあったんだ…」
「ふぅん?面白そうじゃない」
「おい…お前ら、」
まさか入るつもりじゃないだろうな?
訪ねるとりりかと美緒がすかさず当然でしょ、と答えた。…ですよねー。
りりかだけならまだしも、美緒まで加勢されては俺に打つ手は無い。
意気揚々と中に入っていく二人を苦笑しつつ、雛希と後を追った。
*
「ちょっと、何にも出ないじゃない」
「いやぁ、ボクに言われましても…」
美緒がりりかを睨む。
結構歩き回ったが、特に何も起こらず、階段を何回か登っただけだ。まぁ、出るか出ないかは幽霊の気分によるしな。
つまらなくなったのか、帰りましょと美緒が踵を返す。時間的にももう限界そうだし、今日はこれで引き上げることとなった。
ぞろぞろと歩いていると最後尾を歩いていた雛希が、あれ?と足を止めた。何事かと全員が振り返る。
雛希は向かって右側の奥の方を見ていた。そしてゆっくりと、指をさす。
「あそこにあるの…エレベーターじゃない?」
「エレベーター?」
暗くてよく見えないが、確かにぼんやりとそれらしきものが見える。
そういえば、かなりの段数の階段を上った気がする。エレベーターがあっても不思議ではない。
「ちょうどいいじゃん!それ使って一気に降りてっちゃおうよ!」
「ちょっと待ちなさい。ここは廃墟よ?電気が通ってるとは思えないわ」
「まぁ、確認してみればいいんじゃね?動いたら使えばいいし」
そう言うと美緒も納得したのか、こちらに戻ってくる。
揃って雛希のさした方向へ進むと、確かにそこにはエレベーターがあった。ドアの横には逆三角形のボタンが1つあった。どうやらここが最上階らしい。
代表して俺がボタンを押すと、そのボタンが光り、何かが上ってくるような音がし出した。そしてチン、とベルが鳴ってからドアが開いた。
「…驚いた。まさか、本当に電気が通ってるなんてね」
「でかしたぞー雛希ぽん!これで楽ーに帰れるぜぃ!」
「えへへ…」
「そこは照れるポイントなのか…?」
各々に好きなことを言いながらエレベーターに乗り込む。楽には勝てないのだ。
ちょうど俺が乗ったところでドアが閉まる。
すると、今度はりりかが声を上げた。
「およ?」
「? どうしたの?」
「このエレベーター………ボタンが一個も無いよ?」
「え?」
んなバカな。
たった今閉まったドアの横を見ると、そこにあるはずのボタンが何一つとしてついていなかった。…どういうことだ、
「も、もしかして私達…閉じ込められた…?」
雛希が不安そうに呟く。雛希だけじゃない。りりかも美緒も顔をしかめている。突然のことに混乱しているんだろう。俺だっていまいち状況がわかっていない。
というか、冗談じゃない。こんな訳のわからないエレベーターにずっといるなんて耐えられない。何とかしなければ。
「大丈夫だ。ケータイもあるし、いざとなればこじ開けられる。
だから、安心してくれ」
「碧ちん…」
「…そうね、碧の言う通りだわ。まずは落ち着きましょう」
「うん…大丈夫」
よかった。皆落ち着いてきたようだ。
一安心して、鞄からケータイを取り出す。
「よし、じゃあ連絡を…」
ガコンッ!
『!!?』
頭上で何かが外れる音。
そしてその刹那、落下する感覚。
『ぎゃぁああああああああああああああああああああ!!!!』
01.重力には逆らえない。
(怪しげなエレベーターにご注意。)
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