オリジナル
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――――客室
教会から出発する事を諦めたフレイルは、シスターによって客室へと連れられていた。
ベッドとスタンド、机といすぐらいしかないこの部屋はあまりにも質素なものだ。
「何もない部屋ですいません」
「気にしないさ。こっちこそ世話になるんだ、文句なんて言わないよ」
「ありがとうございます」
頬をほんのりと桃色に染めながらシスターは言う。
正確に言うと、神父が帰ってきた時からほんのりと染めながら。
「あの男が好きなのか?」
「えっ!?」
「神父様?って人」
思いがけない言葉にシスターは顔をこれでもかと言うほどに真っ赤に染め、手に持っていた彼女のジャケットを落とした。
その様子に驚きつつも、落ちたジャケットを拾いベッドの上に座るフレイル。
「な、な、な……なんでっ…」
「顔が赤い」
フレイルの言葉にシスターは言葉を失う。
あまりの恥ずかしさに彼女はとうとう、頬に手を当て俯いてしまった。
彼女の反応を一部始終見ていたフレイルは、不覚にもおもしろいと感じてしまった。
「し、神父様は…、孤児だった私を拾ってくださった方なのです…」
シスターは小さいながらも、しっかりとした声でゆっくりと語り始めた。
視線はいまだ自分の爪先を向いていて、フレイルは表情分からなかったが、なんとなく分かるものがある。
「私だけではありません。ここにいる嵐や桐生、小さな子どもたちも元は孤児で、神父様に助けていただいたのです。」
「あんた、孤児だったのか…。」
「はい。神父様は皆に笑顔を与えて下さいました。それだけではなく私をシスターに、嵐には医術と技術の知識を、桐生には戦う術を。そして、まだ小さな子どもたちには里親を探してくれています。」
ようやく顔を上げたシスターは、予想以上に嬉しそうな表情をしていた。
彼女の顔は、神父への尊敬と憧れ、そして恋慕の情で満ち溢れていた。
そんな彼女とは裏腹に、フレイルは胸に溜まっている違和感がいっぱいで気持ち悪かった。
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――――――
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シスターは自室に戻り、フレイルは一人ベッドの上で考えていた。
―――…絵に描いたような、優しい神父様だな………。
彼女の話を聞く限り、こんな荒れ果てた世の中から子供たちを守る『優しき神父サマ』だ。
そんな神父に、どうして自分はこんなにも違和感を感じるのか、自分でもさっぱりだ。
あの神父はどこの誰かも分からない自分を泊めてくれた。
それに違和感を感じるのだろうか。
こんなご時世だ、泊めた奴がラドロ、もしくはアサシンかもしれない。
寝ている間に盗みを働かれたり、殺される可能性だって無くはない。
―――ただのお人好しなのか? それとも不用心なのか? それとも……
思い立ったフレイルはベッドから立ち上がる。
そしてフレイルはジャケットも着ずに部屋を後にした。
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