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「はぁ……」

「どうしたジュンス。ため息なんてついて」

「別にぃ…」


ある日の晴れた屋上。

昼休みは屋上に行って何をするでもなくゴロゴロするのが日課になっていた。

それにいつの間にか付き合いだしたのが、ジェジュン先輩。

サボリ魔のくせに成績だけは良くて見た目も綺麗で

羨ましいけど、悔しいけど、憧れる…。


「暇だなぁって。なんか楽しいことないかな〜ってさ。」

「楽しいことねぇ…」


成績も悪くないけど良くもない。

特に秀でた技術もなければ、見た目も別に…

平凡な自分に、平凡な毎日に

飽き飽きしてしまっていた。

こんなんであと1年も学校生活送れるのかなぁ…。


「じゃあさ、俺のバイト先紹介してやろっか?」

「先輩のバイト先?」

「ここなんだけどさ〜」


渡された名刺には、スタイリッシュな文字が並んでいる

見た感じはかっこいいけど…

『デリバリーボーイ ZION』

そしてその下には、大きめに『JJ』と書かれていた。


「デリバリー…って…これ…」

「そ。男による男のための店」

「先輩こんなのやってたの?!」


デリバリーボーイなんて、なんて安直な名前なんだろう。

男が男に…って、そんな需要あるの?


「結構儲かるんだぜ〜ここ。暇潰しで金もらえるなんて最高だろ?」

「それはそうだけど…。ちなみにいくらくらい?」

「そうだな〜、月平均でぇ〜」


こっそりと耳打ちされた金額は、高校生の僕には見たことも触ったこともない大きさだった。


「そんなに?!一ヶ月で?!?!」

「俺、一応No.1だから♪」

「やる!やりたい!!」

「そ?じゃ放課後連れてってやるよ。また連絡する」


ジェジュン先輩の金額に釣られて、つい二つ返事で決めてしまった。

だって、そんなに稼げるなら、欲しかったスニーカーも、ゲームも、

応援してるサッカー選手のユニフォームだって買える。

事の重大さなんて考えもせず、何を買おうかふんふん浮かれながら教室へ戻る。

授業なんて、まったく耳に入らなかった。


ふと、携帯のバイブ音に気付く。

ジェジュン先輩からだ。


【今日駅前のファミレスで待ってて♪】


それだけ確認して携帯を閉じると、教壇に立つ先生と目があった。


(そっか。今は英語の時間だったっけ…)


寝癖のような癖毛に眼鏡。

冴えない男代表みたいなこの教師はパク・ユチョン先生。

その風貌のせいかなんなのか、彼の授業を真面目に聞く生徒は少ない。

よくよく聞けば流暢な英語を喋ってるんだけど、場所が悪い。

僕のクラスは他より特に不真面目で、注意されたところで大人しくなる奴なんかいやしない。


(かわいそーに…)


そう思いながらも、実際には僕も教科書を開いてノートをとったことなんて一度もない。

せめて教科書だけでもと、開いたところでまた目が合った。

その視線は、少し焦ったように揺れてまた教科書へと落とされる。


(早く授業終わんないかなぁ…)


そんな教師のことなど気にせず、頬杖をついて外を眺める。

その眼鏡の奥の瞳が、また僕に向けられていることなんて気付く筈も無く…
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