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□Love in the Ice
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時は数百年前まで遡る


幕府の将軍は戦乱を好まず

裕福では無かったが、それでも国の発展を夢見て平和に過ごしていた穏やかな時代



城下町にある長屋の一つに、その青年達は居た。

両親を病で亡くし、長い間独りで暮らしてきたユチョン、

そしてその隣に、ユチョンを本当の子の様に世話を焼いてくれた夫婦とその子、ジュンス。



二人は幼い頃からいつも一緒に居た。

勉学を教え合い、剣術を競い合う

まるで兄弟の様だと微笑まれては、どちらが兄役かでよく揉めたものだった。

そんな二人が二十歳を迎えた頃、事件は起きる。



この平和な時代に唯一不穏な影を落とすもの

それはある屋敷に住む一人の男だった。

その屋敷の主はチョン・ユンホと言う。



チョン家は代々、妖術使いとして恐れられてきた。

刃向かう者、気に入らない者は片っ端から消す

そしてその遺体すら家族に帰ってくることはない。

形だけの幕府の裏、実質権力を握っていたのはチョン家だった。



その恐ろしいまでの奇妙さに、暗殺を企てた者も数多く居たが

誰一人としてチョン家を滅する事はできなかった。

先代が死に、今のユンホの代になってからと言うもの

黒い噂や事件こそ起きないものの、いつまた食指を伸されるかわかったものではない。

幕府はそれを恐れ、とうとう城下に恐ろしい命を下した。



チョン家を根絶やしにする事

つまりはユンホを討てとの命令だった。

二十歳を越えた男剣士から順に、一人ずつチョン家へ討ち入ること

与えられた期間は七日間

その間までに帰って来なければ死んだものと見なし

八日目には次の剣士が送られる。



あまりにも身勝手な条例だった。

政府でさえどうにもできない膿を、下町の民が討てるとでも思っているのだろうか。



だが、暗黙の了解の様に誰も口に出さないものの

全員がチョン家を恐れていることに違いは無い。

その条例に楯突く者は、誰も居なかった。





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