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□Somebody To Love
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俺はどこにでもいるアマチュアバンドマン。

21歳。あ、フリーターです。

中学の頃にギターを始めて、どんどんハマッて

元々別のバンドでやってたベースのジュンスとドラムのユノと打ち上げで意気投合(確か)。

お互いのバンドがうまくいってなかった頃に、3人でラーメン食いに行って、

その帰りに一緒にバンドやろうって言ったんだっけ(確か)


いつかデビューして、とか

いつかもっと大きなステージで、とか

高校くらいのときは思ってたけど

それなりに有名なバンドともライブするようになって

たまには地元以外の場所でやるようになって

自分のレベルの低さを思い知らされて

そんな夢、掲げることもなくなった。


それでもバンドを続けてるのは、やっぱり夢を捨てきれないってのもあるんだろうけど

何よりこの3人でバンドをやるのが気持ち良いから

こうして続けてられるんだろうな。


今は地元でもまぁまぁ人気も出てきて固定ファンもできて

正直、調子良いです。

井の中の蛙とは知ってても、この3人ならひょっとして…なんて

思い始めてた夏。


毎月恒例になっている馴染みのライブハウスでのライブを明日に控え

普段通りスタジオでの練習を終えた夜の出来事だった。


「じゃ、俺バイト行くわ!お疲れ〜」

「お疲れユチョン!」

「お疲れ。遅刻すんなよ〜」

「しねーよ!(笑)じゃーな!」


ライブ前日と言うこともあり、練習にもつい熱が入ってしまった。

バイト先までは車で20分。

ユチョンは急いで車に機材を詰め込んだ。


「…あ゛!!!」


運転席に乗り込みエンジンをかけたところで、ギターの換えの弦を忘れたことに気付く。

いつかのライブで本番中に弦を3本も切ったことがあり、おかげで散々だったのだ。

それからライブの前日には必ず弦を張り替えることにしている。

癖と言うより、今では儀式のようなものだった。


ジュンスとユノは、普段からユチョンより30分遅くスタジオを出る。

リズム隊の息を合わせることが大事だとかで
立派な心掛けだとは思うけど、正直寂しかったりもして…


スタジオのスタッフにからかわれながらも、得意のへらへらした笑顔でかわし

2人のいるスタジオへ向かう。

部屋の前まで着くと、何やら楽器音ではなく話し声が聞こえた。


(もう上がるのかな…?)


そっとドアノブに手をかけ音を立てないように薄く戸を開く。

いつもの調子でジュンスあたりを驚かせようと思ったのだ。

だが、ユチョンの目に飛び込んできたのは、いつもの光景ではなかった。


「…………っ!!!!!」


不自然に近づく2つの影。

普段と明らかに違うお互いを見つめる瞳


男女が絡み合う姿は見たことがあるが

ジュンスもユノも 当然男である。


「っユノ…ダメだよ…!」

「なんで…?」

「だって…っもう時間無いし…っ」


ユノはジュンスの身体を滑らす手を止めることなく

唇でジュンスの首筋や頬を愛撫している。


「大丈夫だって…明日のライブには影響出ないようにするから(笑)」

「そっ!そう言うんじゃ…なくて…っ!」


ジュンスも口では拒んでいても身体はユノを受け入れている。


男同士の恋愛に偏見を持っていたつもりは無いが

まさかこんな身近で しかも自分のバンドのメンバーが

いつも使ってるスタジオで…!?


とうとう2人が床に倒れ込んだ瞬間

ユチョンは開いたときよりも確実に静かにその扉を閉じた。


それからのことはよく覚えてない。

どうやってスタジオから出たのか、どう車に乗り込んでどうバイト先に向かったのか

どうやってバイトをこなして、どうやって自宅に帰りついたのか


頭の中では気付けばあの2人の光景がぐるぐると浮かんで

ユノの熱い視線もジュンスの艶っぽい表情も

瞼の裏に焼きついて離れなかった。


果てには夢にまで入り込んできて

あわや自分がジュンスとキスしてしまう直前で目が覚めた。


「最悪だ……」


汗でぐっしょりになった体を流そうとベッドを出る。

と、途端に枕元に置いてあった携帯が鳴り響いた。



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