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□Rainy Night
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雨はキライだ。
空と空気につられて、俺の心もどんより。
何よりクセ毛が更にくるんとなって
…どんより。
雨なんてキライ。梅雨なんてキライ。
会社を出たときには止んでいたのに
湿気でムンムンした満員電車を乗り継いで
ようやく最寄の駅まで帰ってきたらまたこの雨。
おまけにさっきの電車の中に傘を忘れる始末。
ああ、もう、本当にイヤだ…。
走って帰ろうと諦めたそのとき、ポケットの中の携帯が震えた。
画面は…ジュンス。
『もしもし?ユチョン?』
少し高めのハスキーボイス。
俺の最大の癒し、ジュンスの声。
「ん、どーしたの?なんか買ってってほしいものでもあった?」
『んーん、違うよ?あ、今どこ?』
「今?駅に着いたとこで…」
あ………
駅前の道路を挟んで向かい
赤信号で立ち止まっているジュンスの姿が見えた。
俺を視界に留めたらしいジュンスは、電話を切ると大袈裟なくらいぶんぶんと手を振って寄越した。
ぱしゃぱしゃと、水がはねるのも気にせずに
信号が青に変わった途端人混みをすり抜けて駆け寄ってくる。
あ〜あ、すれ違うサラリーマンに、めちゃくちゃ嫌な顔されちゃってるよ…(笑)
「おかえり、ユチョン!」
「ただいま。迎えに来てくれたの?でもなんで…」
「ユチョン雨キライでしょ?僕がいたら、少しは気分も晴れるかな〜って思って♪」
にゃはは〜と照れて笑うその唇に
少し赤らんだその頬に
今すぐキスしてやりたい。
そんなことしたら、もっと真っ赤になっちゃうんだろうけど。
どんよりした俺の心を、吹き飛ばしてくれる
君はまるで太陽
「…あれ、ユチョン傘は?」
「ああ、電車に忘れてきちゃった」
「え〜!傘これ一本しかないのにぃ…」
「……いいじゃん」
ジュンスの肩をぐいっと引き寄せて
ひとつの傘に、ふたつの影
「ちょっ…ユチョン!」
「相合傘〜♪」
「こっこんな人前じゃ…ヘンに見られちゃうよ…」
「いいの。ジュンスだから」
さっきまでのどんよりはどこへやら
恥ずかしがって離れるジュンスを抱き寄せて
また離れては抱き寄せる帰り道。
毎日こうなら、雨も悪くないかも…
「も〜せっかく傘差してったのに濡れ濡れだよ〜」
「濡れ濡れって…(笑)」
家に着いた頃には、俺もジュンスも傘の意味がないほど濡れてしまっていた。
肌に張り付くシャツを脱ぎ捨て、ふとジュンスを見やると…
「わぉ」
「…ん?なに?」
白いTシャツの下に透けた、紅い尖り
そしてその少し上には、昨夜俺がつけたばかりのキスマーク
「いや、濡れ濡れになるのも悪くないな〜と思って」
「ぇ………うわぁ!!!」
俺の視線を追うように、視線を落とすジュンス。
そこでようやく気付いたらしい、顔を真っ赤にして両手で胸を押さえた。
「ュ…ユチョンのバカ!ドスケベ!!」
ああもう、どうしてやろうこの可愛い生き物。
「ね…一緒にオフロ入ろっか♪」
「……ぃぃ、けど…」
ほんと、毎日こうなら雨も悪くないな。
太陽のような君が こうして俺を照らし続けてくれるなら。
end.