銀色の時、流れて T

□少女の失ったもの
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治療を終え、白熊のベポに少女の血と泥で汚れた身体を拭くように命令し、ローは輸血用の血液のチェックをしていた。

ベポがタオルで拭うたびに現れる少女の身体についた傷や痣。

少女の身体を見る限り、かなり好き勝手に今まで殴られていたようだ。





──隙をみて逃げ出そうとして捕まったのか?飽きられて処分されそうになっていたのか?


──結果、こんな世界で生きているのが辛くなって、死にたくなるのは当たり前なのだろうか?





ローはそんな少女の姿を見つめながら心の中で呟いた。

そんな中、ふとベポが手を止めた。そして迷いながらも口を開く。





「この子、どうしたらこんな傷…。キャプテン、この子はいったい何者?」





身体から次々と現れる傷に疑問を持つのは当たり前だった。

ローは顔色を変える事なくベポに告げた。





「…知らねぇ、山賊がこいつを殺して捨てようとしてたから俺が拾った」


「そんな…」


「安心しろ、どうせ捨てられるはずだった人間だ。船に乗せてたって面倒な事にはならねぇよ」


「…………」





ローの言葉に泣きそうな程、ベポは顔を歪めた。

どうやらローの言葉や少女の具合を目の当たりにし、彼女が暮らしていた世界を察したようだった。

更に疑問を投げつける事はなく、無言で少女の身体を拭くのを再開した。

麻酔と傷のせいだろう。少女はそれから数日、目を覚ます事なく眠り続けた。




















「キャプテンが拾ってきた女の子…まだ生きてんのか?ベポ」


「うん、最初は危ないみたいだったけど今はただ寝てるだけみたい」


「へー…良かったな?」


「うん、キャプテンがちゃんと毎日様子みてあげてるから、もう大丈夫じゃないのかな?」





食堂で他のクルー逹と食事をしていたベポが質問に答える。

あの日から、ローの命令でベポ以外の者は医務室へは出入りしてはいけない事となっている。

その為、少女についての様々な質問をベポはクルー逹から受けていた。

彼が少女を拾ってきた日…あの日に彼とすれ違った者しか彼女を見ていない。

その為、この数日少女の事ばかりが話題になっている。





『見掛けた奴の話じゃ、なかなか綺麗な子だったらしいぞ?』


『銀髪で儚げな妖精のような少女らしい』





船内で飛び交う噂がクルー逹の心を踊らせた。

けれどベポはいくら医務室に入る事を羨ましがられても心が晴れる事はなかった。

原因はローとの先日の会話の内容。





『寝てるからといってこいつから目を離すなよ?なるべく側にいろ…俺もなるべくここに来るようにする』


『アイアイ!わかったよ、キャプテン。でもどうして?』


『自分がまだ生きていると知ったら、こいつは自分になにをするかわからないからだ』


『…それってどういう意味?』


『こいつ…本当は死にたがってるんだよ、だから何をするかわからねぇ』






綺麗な銀髪に綺麗な容姿。寝顔だけでも美しいこの少女は死のうとしていた。

普通に生きていれば、幸せな毎日を送れたであろう容姿のこの少女。

死に追いやる程の世界を見せたのは腐った思考を持つ人間の仮面をつけた悪魔達なのだ。

それを思うとベポは胸が痛んで仕方がなかった。
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