銀色の時、流れて T
□私を殺して
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「わあぁ…キャプテン!?なに持って帰ってきたのぉ!?」
「んー…どーしたぁ?ベポ…って、うわぁぁ!」
「うるさいぞ…ベポ。湯を沸かして持ってこい」
「……え?」
「早くしろ!」
「あ…アイアイ!!」
船に戻ったローの姿を確認したクルー逹は慌てふためいた。
気紛れな船の主が無事に帰ってきたと安心したのも束の間、彼は血だらけの少女を抱えていたのだから…。
船内は一瞬で驚きに包まれた。けれど、当の本人はまったく気にする事はなく、簡単に命令すると医務室へと足を進めた。
少女を抱えて両手が塞がっている為、長い足で医務室の扉を蹴り開ける。
大きな音と共に開いた扉…。そのまま彼は室内へと足を進めた。
真っ白いシーツの上に少女を寝かせると顔色を覗き見る。
その顔は青白く生気のないものだった。
「やべぇな、出血が多いか…」
少女の顔に触れると予想よりも冷たい体温。ローは舌打ちをすると、輸血の準備を始めた。
『死の外科医』と世間で呼ばれているだけあり、この船の医療設備はなかなか素晴らしい。
手早く細い血管に長い針を刺し込み、輸血チューブと繋げる。
そして少女の着衣を破いた瞬間、医務室に入ってきたのは白熊だった。
「……!?ごめん…キャプテン!!」
少女の着衣を破くローの姿を視界に入れた白熊…彼はその光景に慌てふためく。
けれどそんな時にもローの表情は変わらない。
手を休める事なく、冷静に言葉を綴った。
「馬鹿、腹の手当てがしやすいようにだ」
「あ…そっか、そーだよね、なんだビックリした…あのね、お湯持ってきたよ?」
「あぁ、悪いな?…そこに置いてくれ」
「アイアイ!」
──なんだか、とにかくムカついた。ただの気まぐれだったが、せっかく俺が助けてやったのになにが『殺して』だ。
──生きて苦しめばいい。
──簡単に死ねると思うんじゃねぇよ。