銀色の時、流れて T

□私を殺して
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ただなんとなくだった。

なんとなく立ち寄った島でトラファルガー・ローは一人、散歩をしていた。

船を出る前、クルー逹がローについて行こうとしたが、それを断りローは一人で船を下りた。

ただフラフラと町を歩き、ある程度の時が過ぎた。

ただ歩くのもつまらないものだ…とローが船に戻ろうと街を抜けた時、嫌な光景が彼の視界に入った。





「海賊…いや山賊か?」





森の入り口。

数人の男逹が獲物とみられる人物を囲むようにして輪を作っている。

彼の元に届くかすかな血の臭い。

輪の中心にいる人物は相当な怪我を負っているのだろう…。





──一体何をしでかしたのか?





山賊同士の仲間割れだろう…と、目を凝らして見る。

けれど男だと思っていた獲物は長い銀髪を持った少女だった。

地面には彼女の長い銀髪が広がり、スラリと伸びた長く細い手足が銀髪を一層美しく見せていた。

山賊の頭だと思われる男が少女の銀髪をつかみ持ち上げる。抵抗する力も残っていない少女はそのまま動かない。

腹部からは赤黒い血液が流れ、銀髪に白い肌…身につけているのは恐らく白いワンピース。

全てが白い彼女から流れる赤だけが鮮明でローはそれから目が離せなくなっていた。

人形のように動かない彼女。

ここからでは、生きているのか死んでいるのかもわからない。





「じゃあな!」





髪をつかんでいる男が、嫌な笑いを浮かべながら少女目掛けて剣を振り下ろした。

確実に彼女の息の根を止める為…。

瞬間、ローは持っていた長い刀でそいつの腕を切り落としていた。




















それからは早かった。

山賊達が抵抗する間もなく、その場に居た男逹をローは全員切り捨てた。





「雑魚め」





吐き捨てるように呟いたロー。

彼の回りには先程まで優勢だったはずの山賊逹の無惨な肉片…。

そして先程と変わらぬ姿で存在しているのは地面に倒れた血濡れ少女だった。

ローはただ彼女を静かに見下ろす。

生きているのかも、死んでいるのかもわからない少女を…ただ見下ろした。





「…………」


「ガバッ……ゲホ…」


「どうやら死んではいなかったみたいだな?」





瞬間、勢い良く少女は咳き込んだ。


咳き込む少女に話し掛けながらローはニヤリと笑う。そして屈み込み、倒れている少女の顔を覗き込んだ。

少女の瞳がゆっくり開かれ、彼を捕えた。

薄いグレーの色素の薄い瞳。血や泥で汚れてはいるが少女の容姿は美しかった。

その姿にローは瞳を見開いた。

彼の心を支配したのは単純な感情。





──なぜこんな容姿の女が殺されかけていた?





そう、殺してしまうには惜しいと思わせる程の容姿を彼女は持ち合わせていた。





「ずいぶんとやられたみたいだな?仲間割れか?」


「ころ、し…て…」


「…………」





ローの問い掛けに少女は掠れた声でただ一言だけそう告げた。

そして少女は再び死んだように瞳を閉じてしまった。
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