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□手癖の是非
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「…おい」
「なに?」
「それ…痛そうだからそろそろやめないか」
「え、」
どれを?と聞く前に千聖君が私の手を掴んだ。
「これだ。血が出ている」
「あ、これか」
『これ』と言うのは、先程から何となく手いたずらをしていた親指のことだ。
「痛くないのか?」
「ちょっとチクチクするかな」
「はぁ…」
「あはは、このくらい舐めとけば治るよ」
「笑い事ではないぞ、まったく」
そう言うが早いが、千聖君が私の指をぱくりとくわえた。いつぞやもこんなことがあった気がするけど…!
「え、あの、ち、千聖君?」
「ん?」
「あの、舐めとけばって言うのは自分で…」
「だめだ。真奈美はそのまま噛むだろう」
「うっ…」
せめてもの抵抗に何とか手を引っ込めようと思ったけど、しっかりと掴まれた手はびくともしない。一応利き腕なんだけどなぁ、掴んでる千聖君の手は利き腕じゃないのに。
「…いっ…!」
「…少ひ我慢ひへろ」
そうこう考えているうちに傷口を舐められて小さく悲鳴があがる。でもそんな事は大した問題じゃない。
「ちさ、千聖君、もういいって…」
「………」
「千聖君ってば…」
「………」
だめだ、離してくれない。私の静止なんてどこ吹く風で黙々と舐め続ける。傷口とか、その周辺とか、あちこちに舌があたってこそばゆい。というか恥ずかしい。しかもさっき喋った時に指を甘噛み…って、そうじゃなくて!
「ね…もう大丈夫だってば…」
「………仕方がない……」
渋々、といった感じで千聖君が口を離した。
「もうするなよ」
「う…気を付けます…」
「よし」
チュ、と指にキスをして千聖君は手を離した。
「まぁ…次にやったら、また俺が舐めるがな」
「…っ!」
ニヤリと不敵に笑うその表情は、言外にこう言っていた。
次はこの位では済まさないぞ、と。
(「…俺も癖になりそうだな」)
(「手いたずらやめます、絶対やめます!」)
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相互御礼とか言って押し付けてしまいました…。
泉水様、返品可、クーリングオフは無期限です…