Vitaminもの2
□俺色騒動
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最近、やけにポン太の機嫌が良い気がする。なんかスゲーニコニコしてたりするのに、何かあったのかと聞いても「何でもないです」の一言だけ。そして何より怪しいのは…俺が新しいゲーム買ったり、フィギュアを増やしても大して怒らなくなったこと…。
(いや、怒られねーのはいいんだ。全然、まったく)
そりゃ、リアルで誰が一番かって言われたらポン太に決まってるわけで。
ただ趣味としてのゲームはやめられないわけで。たまに妬かれたり、餅みたいに頬を膨らませたりとかしてたりするのも悪くはないとも思った。でもやっぱり、喧嘩になっちまうこともあったりして。それでもやっぱり最後には仲直りしてたのに。
(…諦めたのか?いや、でも顔とか雰囲気とか、全然そういうんじゃないし)
むしろどうだろうか、ゲームが増えてもフィギュアがふえても『ふふ、楽しそうですね蘭丸さん』くらいしか言わなくなって。最初は喜んでいたが、それも束の間。逆に不安になってきた。
(何なんだ…まさか見捨てられたのか!?いや、でも全然そんなこと言われてないし)
会えば話すし普通に笑う。ただ、自分の趣味についてまったく持って不干渉になった。いや、良いことなんだろうけど、なんというか、冷たく感じてしまう。
(しかも最近、メールとかすげー減った気がする!)
そう、以前に比べてメールが減った。もっと言ってしまうと、自分から送らない限り『おやすみメール』しか来ない。それでも来るだけ良い方なのだろうか。
(何だ何だ…本当にどうかしちまったのかよ…)
こんな不安を抱えて今日で早3週間。そろそろ我慢の限界に来た。
(よし…今日こそポン太に聞く!どうかしたのか聞き出す!)
そんな決意をして、自分の部屋で携帯を握り締めた。ディスプレイに映し出されているのはポン太の電話番号、後は通話ボタンを押すだけだ。
「くっそ…ポン太のくせに、なんなんだよ…」
このままじゃ、買ったばかりのゲームだって気が散ってできやしない。
「よし…かけるぞ…かけるぞ……オラっ!」
(くそ、なんでアイツに電話するだけなのにこんなに悩んでんだよ…)
5回、6回…しばらくコールをしたあと、慌てたような声で電話が繋がった
『もっ、もしもし!真奈美です!』
「お、おう、ポン太。い、今暇か?」
『あ、はい、大丈夫…です』
「暇なら良いんだけどよ…ちょっと、お前の声、聞きたくなって」
『ふふ、変なの。珍しい』
「う、うっせ!てか、そんなことよりお前、今何してた?」
『べ、別に…その、物語を見てたりとか』
「あ、テレビでも見てたか?確かに電話の向こうからなんか聞こえてくるような…」
『う、嘘!?』
(何だ!?)
ガチャガチャと騒がしい音がして、電話口に何かがぶつかったような音がしたときだった。
『…好きなんです、貴女のことが…ずっと、ずっと前から…』
「……は?」
電話口から、突然見知らぬ男の声が聞こえてきた。今、こいつ、なんて言った?
「…い、今…今のって……」
『ち、違うんです!蘭丸さん!』
そういうことだったのか。最近メールがこなくなったのも、最近楽しそうにしてたのも。
「あ、あぁ、そういうことな…悪い、邪魔した………」
『誤解です!邪魔なんかじゃなくて…!』
(何が誤解なんだよ。だって今スゲーはっきり聞こえてきたじゃん。テレビ見てたのだって、一人じゃなかったんだろ。だから電話気付くの遅くなったんだろ)
「………」
『…あの、蘭丸さん』
「…なんだよ」
『その、今の事とか、正直に話します。だから…今から会えないですか…?」
「いや、別に会わなくても、話とか…携帯で話せるし」
『だって…』
「ごめん…つーか、ここで話せないことなら、聞きたくないっつーか…聞けないっつーか…」
『…わかりました…じゃあ、このまま話します…』
「あぁ…」
なぁ、誰なんだよソイツ。
『さっきのは…あの、蘭丸さんで言う、幼馴染というか…お兄さんみたいな人と言うか…その…』
「……」
(とまるなよ、言いにくそうにするなよ…俺だって、聞きたくなんかねーよ……)
さあ早く、とどめをさしてくれ。
『……ゲームの攻略キャラなんです!!!』
「……は?」
『あの、だから…最近、その…恋愛シミュレーションゲームをしてて…それで、丁度告白シーンのときに電話がかかってきて、でもヘッドホンしてたから気付くの遅くなっちゃって…』
「じゃあ、さっき聞こえたのって…」
『急いで出たから画面消すの忘れちゃって…それで電話してたら、ヘッドホンのところから聞こえちゃってたみたいで…音量を変えたらBGMは消えたんですけど、間違って進むボタン押しちゃったら台詞が再生されちゃって……』
ほら!とボタンを押す音がしたかと思ったら、電話口からさっきと同じ男の声が、同じ台詞で流れて来た。
「おい…ポン太ぁ」
『隠しててごめんなさい!!あの、こんな誤解させるつもりじゃなくって、ただ蘭丸さんが楽しそうに攻略してるの見てて、面白そうだなって思って!』
つまり、元をたどってみると…俺のせい…か?
「もしかして…最近、新しいゲーム買ったりフィギュア増えたりしてもあんま怒らなかったのって…」
『その、やってみたらすごく面白くて…これなら増えちゃうのも仕方ないって思って…』
「…ははっ、あはははは!悪い、ポン太、そうだよな。お前が浮気とか、できるわけねーもんな!あははは!」
『わ、笑いすぎです!その、誤解を招いてしまったのはごめんなさいですけど…!』
「いや、いいって、そうだよな!な、ポン太、ゲームって楽しいだRO?」
『楽しいですけど…!楽しいですけど!』
電話の向こうで赤面しているであろうポン太の顔を想像すると、すごい笑いがこみ上げてきた。
とりあえず、コレは俺色に染まったってことでいいんだよな、ポン太!
(「んじゃ、今度こそ邪魔して悪かったな!続きから楽しんでくれYO」)
(『もうそれどころじゃないです!』)
(「だーいじょうぶだって!なんならバックログから戻っていい雰囲気からやりなおせるぜ」)
(『え、バックログなんてついてるんですか!?』)
(「最近のは大体ついてんじゃねーの?メニューとか開いて探してみろって」)
(『あ、本当だあった!』)
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ある意味とんでもない罰ゲームだと思います。