Vitaminもの

□最後の意識
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晴れ渡る朝、肌寒い気温。この日のために整えられた学校の桜。とうとう来てしまった。

「一君、おはよう!」
「おはよ、先生。気合い入ってんな」
「ふふん、だって今日はみんなの卒業式だもの。このくらいはね!」
「良いんじゃねーの。似合ってるぜ、今日の服」
「ありがとう。一君にそう言ってもらえると嬉しいわ」

そう言って笑顔になる顔には隈、目の周りには赤み。
先生のことだから遅くまで泣いてたんだろうな。思いっ切りわんわん泣いたんじゃねーかってのは大いに予想できるし。

「せっかく似合ってんだからさ、あんまり泣いてぐちゃぐちゃにするなよ」
「わ、わかってます!一君こそ」
「はいはい、大丈夫だって」
「ちゃんと見てるからね!」
「わかってるって。俺も先生が泣き出さないかちゃんと見ててやるからさ」
「もう!そんなの見なくても良いんです!」
「ははっ、ちゃんとハンカチ持ってろよ」
「ちゃんと持ってるわよ」
「おっ、さすが先生」
「もちろん。ねえ、一君」
「なんだよ先生」
「…卒業、おめでとう!」
「…ありがとな」

こんな感じで別れたのは卒業式前のこと。
入場して、開式の挨拶とか聞いて式が始まった。
この席だと先生の顔が少しだけ良く見える。

「(すげー真剣な顔…泣きそうなの我慢してるからそんな顔してるくせに)」

いつもなら長くてつまらない校長の話とか、よくわからない来賓祝辞とか、そんなものでさえ短く感じる。
だって、この式が終わったら俺は卒業で、もうこの学校の生徒じゃなくなって、もう無条件で毎日先生に会えなくなる。
危なっかしくてドジでほっとけない先生のこと、もう見ていられなくなる。

「(…先生、俺ずっと先生のこと好きだった)」

あの人と幸せに%C

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