Vitaminもの
□再会の拠
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これの続きっぽいもの
ソワソワ、落ち着かない様子で腕につけた時計を何度も確認する。
『数日立ち寄るだけなんだけどね。でも、丁度良かった』
先日の彼女の言葉が蘇った。
(もうすぐだ。もうすぐ悠里に会える)
緊張と嬉しさが入り混じる中で、放送が耳に入る。
間もなく、待ち焦がれていた飛行機が到着すると。
思わず緩んでしまう口元を直して、ゲートに向かった。
ゲートをくぐって一息、久しぶりの日本。
海外をあちこち飛び回ってきて、どこも素敵な国ばかりだった。
だけど、1つだけ絶対に足りないものがあった。
「瞬君…元気にしてるかな」
ずっとずっと会いたかった大切な恋人。
待ってるだけのときはわからなかったけど、待たせてた今ならわかる。
待たせる方だって、寂しかった。瞬君欠乏症だわ!
「よし!これから瞬君に会うんだし…後でメイクの確認してこよっと!」
「別にいいんじゃないか?悠里はそのままでも十分綺麗だ」
「だって、久しぶりに会うんですもの。ヨレヨレしてるところなんて見せられないわ…」
「少しくらい弱ってるところを見せてくれても良いと思うが」
「ダメダメ!瞬君ってばすっごく格好良いんですもの。こういうときに少しでも綺麗にしておきたいの!それに今日は瞬君の誕生日だし…って、きゃー!!瞬君!?」
驚いて口をパクパクしてしまった私の隣には、相変わらず格好良い…いや、更に格好良くなった瞬君の姿が。
何でこんなところに?もしかしてさっきの聞いてた?聞いてたとしたらどこまで聞いてた?あ、メイク直しに行かなきゃ…
「おかえり、悠里。メイクは直さなくても十分キレイだと思うぞ」
「しゅっ、瞬君?」
「どうした」
「え、なんでここに…って言うか、さっきのどこまで聞いてたの?」
「そりゃ、悠里を迎えに…さっきのは、その、全部聞いた」
「だって、瞬君はすごい忙しいし…もしかして瞬君欠乏症が悪化して幻覚が見えちゃってるだとか」
「お、俺だって悠里欠乏症だ!その、だから、メイクを直す時間も惜しい…」
赤くなって、目線を逸らす瞬君。こういうところは昔から変わってないなぁ。
なんて、ふと見上げてみた瞬君の耳にはあのときのピアスがしっかりと付いている。
「…ふふっ」
「悠里?」
「瞬君、ピアス。つけててくれてるんだね」
「当たり前だろう。それに、こいつらも会いたがってたみたいだしな」
スッと瞬君の手が伸びてきて、私の耳…もといピアスを触った。
やっぱりこういう仕草とかは可愛いじゃなくて格好良い。
「…それ以上に、俺だって会いたかった」
「…私も、瞬君に会いたかった…ただいまっ…」
思わず抱きついてしまった私を、瞬君がギュッと抱きしめてくれる。
あぁ…やっと帰ってこれた。瞬君のいる場所に…
いつも自分が言っていた『ただいま』を、貴女が言う。
そうか。いつも貴女はこんな気持ちで俺を待っていてくれたんだな。
その一言が、俺はこんなにも嬉しくて仕方がない。
だから俺も貴女に伝えよう。『おかえり』に、愛を込めて。